April 6, 2010

「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」(ポール・オースター編)

●読んでしまった、「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」。少し前に「内田樹の研究室」で日本版「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」を作ろうっていう記事があったじゃないっすか。その影響で。
●これはポール・オースターが書いた小説ではなくて、彼がラジオ番組の中でリスナーから募った「物語」を集めている。条件としては「実話であること」「短いこと」。それ以外に制限はなく、どんな内容、スタイルでもOK。悲劇的な話でも喜劇的な話でもよくて、紙に書き付けておきたくなる体験、作り話のように聞こえる実話が求められた。
●だれかにぜひ話しておきたい物語って、みんな一つや二つは持ってると思うんすよ、愉快なものであれ、悲しいものであれ。そういうのって、個人にとっては大切な物語なんだけど、他人にとってはどうでもいい話だと思いがちじゃないっすか。事実、ここに集まった一つ一つの物語を見ても、かなりばらつきがあって、なかにはそれほど珍しくもなければ興味深くもない話もある。ところがこれらが集合体になると予想外の迫力を生み出してくる。個人の想いの強さがそうさせるのかなあ。「誰かがこの本を最初から最後まで読んで、一度も涙を流さず一度も声を上げて笑わないという事態は想像しがたい」とオースターが序文に書いているのはその通りだろう。
●家族、動物、モノ、戦争、愛、死、夢……いろんな話題があって、ワタシが1巻と2巻を読んだ中で特別に印象に残ったのは、1巻の「クリスマスにあるはずのないプレゼントが家族みんなに贈られる話」と、2巻の「定年前にリタイアして文化的生活を送るホームレスになった女性」の話。当分忘れられそうにない。

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