August 5, 2010

エンリコ・オノフリ「バロック・ヴァイオリンの奥義」

エンリコ・オノフリ「驚愕のバロック・ヴァイオリン」●やっと聴けた、エンリコ・オノフリの新譜「バロック・ヴァイオリンの奥義」。もうびっくり。一曲目がバッハのあの「トッカータとフーガ」(笑)。しかもこのディスクって、基本的に無伴奏ヴァイオリンのアルバムだったんすね。誰もが知る名曲でありながら、そもそもバッハの作品なのかどうかと疑われる「トッカータとフーガ」が、オノフリ自身の編曲による無伴奏ヴァイオリンで弾かれている。あんな重厚で身振りの大きな音楽をヴァイオリン一丁だけでどうするのかと思いきや、これがあたかも最初からヴァイオリンのための曲だったかのように響く。というか、実際この曲にはヴァイオリン曲をオルガン用に編曲したのではないかという説まであるらしい。感情表現の起伏が大きくてみずみずしい歌心にあふれているんだけど、一方でどこか厳粛なオルガンの音色がエコーするかのような音楽。
●普通の無伴奏曲としては、たとえばテレマンの「無伴奏ヴァイオリンのためのファンタジア」(幻想曲)から3曲。この第1番冒頭のラルゴって実に美しいっすよね。ワタシにとっては、夜中に一人でぼうっと考え事というか考えない事をして空白の気分を味わうときに聴く曲の一つ。
●笑えるのは同じくテレマンの「ガリヴァー組曲」。ガリヴァー旅行記を題材にした超描写的な音楽で、一、二分の小さな曲5つでできている。小人たちの国の住人であるリリパット人が(たぶん彼らにとっては)荘重なシャコンヌを踊り、巨人たちの国ブロブディンナグ人は軽快なジグを踊る。浮世離れした科学の国である空飛ぶ島ラピュータの住人は、夢想にばかりふけっているので、正気に返るために下僕に自分の頭を叩かせている……。なんども叩いてもらっているようだが、最後にはやっぱりぼんやりしてしまうようだが(笑)。この曲のみはヴァイオリン2台のための作品で(第2ヴァイオリンは杉田せつ子さん)、昨年の来日公演でも披露してくれた。楽しい。
●それにしてもジャケを見ると、オノフリはさらに激ヤセしてて、LFJで来日した頃とは風貌が完璧に別人。
●オノフリは来月、ヴァイオリニストとして来日公演がある。9月29日(水)、東京文化会館 小ホール。バッハの「トッカータとフーガ」も演奏される模様(→ オフィシャルサイト / チケットぴあ)。

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