April 14, 2011

プラシド・ドミンゴ・コンサート・イン・ジャパン2011

●大地震から一ヶ月以上経った今も次々と海外のアーティストの来日中止が伝えられるが、ドミンゴは「日本の人々の深い悲しみに寄り添うために」と予定通り来てくれた。来日したとたんに、余震が活発になってしまってなんだか申しわけない気分にもなるが、大スターが今こうして日本で歌ってくれることのありがたさを昨晩ほど痛感したことはない。共演のソプラノはアナ・マリア・アルティネスがヴァージニア・トーラに変更(容姿端麗でチャーミング)。豪華プログラムに一枚彼女のプロフィールページが挟まれていた。伴奏はユージン・コーン指揮日本フィル。
●前半はヴェルディ作品。MET等で話題になった「シモン・ボッカネグラ」からシモンとアメリアの二重唱、「トロヴァトーレ」からルーナ伯爵のアリア「君の微笑みは」といったバリトンのレパートリーと、「オテロ」の「オテロの死」など本来のテノールのレパートリーを織り交ぜて。後半はオペレッタが中心。ドミンゴは到底70歳とは思えない朗々たる歌唱、そしてカッコよさ。アンコールに入ってマスカーニ「友人フリッツ」から「さくらん坊」の二重唱、「ベサメ・ムーチョ」らが歌われると客席は大いに沸き、さらに岡野貞一「ふるさと」が客席といっしょに歌われると場内総立ちに。最後はララの「グラナダ」でシメ。ドミンゴからは大スターのオーラに加えて、人柄のよさ、親愛の情みたいなものがにじみ出ていて、存在そのものがお客さんの心を動かしていた。ホールを出て時計を見たらもう10時で驚く。3時間があっという間に感じられた。ドミンゴの貫禄、美しい花で彩られたホール、あでやかな着物美人による花束贈呈……。たまたまそういう日だったのか、「繁栄へのノスタルジー」みたいなものを仮想的に(きっと過剰に)予感してしまった。

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