November 10, 2011

ラザレフ&日本フィル記者会見、新プロジェクト「ラザレフが刻むロシアの魂」

ラザレフ
●昨日は杉並公会堂でアレクサンドル・ラザレフ指揮日本フィルの公開リハーサルと記者会見へ。1時間のリハーサルをプレス関係者に公開した後で、記者会見を開くという方式。この方式はいいっすね。
●会見でのテーマ、まず新プロジェクト「ラザレフが刻むロシアの魂」について。これまでプロコフィエフ・チクルスに取り組んでいたラザレフ&日フィルのコンビが、次に取り組むのはラフマニノフ。この週末、明日11日(金)と12日(土)にさっそくラフマニノフの交響曲第1番が取り上げられるが、2012/13シーズンには交響曲第2番、同第3番、交響曲舞曲、ピアノ協奏曲第2番、同第3番他が演奏される。11/12シーズンより、ラザレフと日フィルは首席指揮者の契約を5年間延長、今後ラフマニノフに続いてスクリャービン、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチら、ロシア人作曲家たちに取り組むという。
●ラザレフは「プロコフィエフ・チクルスはオーケストラにとって有益だった。オケの音色を変えた。今度のラフマニノフではプロコフィエフとはまったく違ったオケになることが要求される。ラフマニノフは高まる感情が嵐となって押し寄せる音楽だ。日フィルにとって大きな糧となるだろう」と述べた。
●あわせて12/13シーズンのラインナップ、さらに首席客演指揮者ピエタリ・インキネンの3年の契約延長が発表された。インキネンは12/13シーズンでシベリウスの交響曲全曲を3回の演奏会にわたって指揮する。
●ラザレフがラフマニノフの交響曲第1番についてあれこれと余談を披露してくれたのがおもしろかった。ラフマニノフの交響曲第1番については、彼のピアノ協奏曲第2番と合わせて有名なエピソードがある。リムスキー=コルサコフやリャードフ、キュイなど楽壇の大物を前にペテルブルクで行なわれた交響曲第1番初演は悲惨な失敗に終わる。キュイは新聞批評で「地獄の音楽」と酷評した。若いラフマニノフは失意に打ちのめされ作曲ができなくなる。その後、ラフマニノフは精神科医ダーリの催眠療法を受けて、ふたたび作曲の筆を執り、3年後に名作ピアノ協奏曲第2番の初演に成功を収め、復活する。ラフマニノフの交響曲第1番初演が失敗に終わったのは、指揮をしたグラズノフの不手際だったと伝えられている(彼は酔っていたらしい)。ラザレフはこれをムラヴィンスキーから聞いた話として披露してくれて(ムラヴィンスキーもやはりだれか先輩から人づてに聞いた話なんだけど)、グラズノフはゲネプロと本番の間にアストリア・ホテルで豪勢な昼食を食べたという。アストリア・ホテルでおいしい食事をするのにウォッカを飲まないということはありえない。これが悲劇だった。
●で、ここから先は初耳だったんだけど、ラフマニノフは初演の失敗の後、一刻も早くモスクワに戻りたかった。しかし、駅に向かう途中で、意を決してグラズノフに会いに行った。ここで1時間だけ時間があった。そのとき二人が何を話したかは誰も知らない。でも二人は生涯にわたる友人となった(!)。ラフマニノフはグラズノフが亡くなるまで経済的な援助までしたという(ラフマニノフが先輩のグラズノフを助けたのであって、逆ではない)。
●さらに披露された余談。グラズノフはシベリウスと仲がよかった。ヘルシンキのキャンプというレストランでは数日間にわたって外に出ずにひたすら飲み続けたんだとか。シベリウスの飲酒癖も有名っすよね。

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