ドミノ・ピザ
December 8, 2011

「小澤征爾さんと、音楽について話をする」(小澤征爾、村上春樹)

小澤征爾さんと、音楽について話をする●あっという間に読んだ。「小澤征爾さんと、音楽について話をする」(小澤征爾、村上春樹著/新潮社)。とんでもなくおもしろい。村上春樹による小澤征爾のロングインタビューということなんだけど、なにしろ一年の間に世界のあちこちで語り合ったというもので、密度も濃ければ量も多い。知らなかったエピソードも山ほどあっておもしろいし、小澤征爾の音楽に対する率直な考え方もうかがえる。
●すぐれた小説と同じように、すぐれたインタビューも重層的に読んで味わえるものなんだな、と感じた。つまり、まず一次的には話される内容が興味深い。村上春樹はすごくよくクラシック音楽を聴いているし、感じ方とか見方はほとんど完璧にワタシらのよく知るクラシック・ファンというか「クラヲタ」のセンスと一致しているんすよ。質問もいい。小澤征爾も相手が音楽関係者ではなく、以前より交友のあった作家であるからこそ、これだけオープンに話してくれたにはちがいない。
●でもそれ以上におもしろいのは対話の作法だと思う。インタビューといっても、これはただのQ&Aじゃなくて、対話なんすよ。で、この対話は音楽を演る人と聴く人の対話の常として、ときどき必然的にすれ違う(これはちゃんとすれ違ってくれないと対話が成功しない)。かみ合ったときもすれ違ったときも小澤さんは「そうですね」と文面上肯定するんだけど、微妙に「そうそう」と「うん、そうだねえ」の間に違いがあって、そのニュアンスが文章にあらわれている(たぶん)。これは演奏する側が真実で聴く側が幻想を抱いているっていう一方的なことじゃないんすよね。同じものを入り口から見たときと、出口から見たときの違いで、もちろん客席は出口の側だから出口に真実がないはずがない。このすれ違いが相互の敬意と共感のもとに起きると対話はおもしろくなる。聞き手は躊躇しない。

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