November 9, 2012

ルプーのオール・シューベルト

●8日は東京オペラシティでラドゥ・ルプーのオール・シューベルト・プロ。前回の東京公演はキャンセルになってしまったので、ようやく。16のドイツ舞曲D783、即興曲集D935、ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調。ルプーはピアノ椅子ではなく、高さの調節できない普通の椅子(オケで使うパイプ椅子?)にどっぷりと腰かけて弾く独特のスタイル。舞台は暗め。近年の世評があまりに高すぎて、期待半分不安半分くらいに身構えていたんだけど、すっかり魅せられて放心してしまった。ディテールまで徹底して彫琢したシューベルトのはずなんだけど、外枠の大きな流れは滑らかで淀みない。弱音方向の繊細な表現に重心が置かれて、深みのある音色もすばらしい。作為の重畳だけが自然体を装えるという意味で、すぐれてシューベルト的なのかも。
●ルプーが曲間、楽章間を取らず、緊張感を切らさないように意図する一方で、客席側からは(特にソナタの楽章切れ目で)「ここで間がほしい」と要求するかのように逐一咳払いが起きた。ワタシの解釈では、これはマナーの問題ではなく、ピアニストvs聴衆の目に見えないバトル。自分の儀式化された世界を完成させたいピアニスト対こっちを置き去りにしないでっていう客席の一部との。おもしろいと思ったけどなあ。
●客席に内田光子、アンデルシェフスキ、小菅優といったピアニストたちの姿あり。アンコールもシューベルトで、ピアノ・ソナタ第19番第2楽章と「楽興の時」第1番。

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「ジュリアーノ・カルミニョーラ&矢野泰世@トッパンホール」です。

次の記事は「山田和樹&日本フィル→エド・デ・ワールト&N響」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ