January 30, 2013

大井浩明POC#14「ジョン・ケージ/南のエテュード」

星図●26日(土)、古賀政男音楽博物館のけやきホールで、大井浩明さんのピアノによるPOC (Portraits of Composers) #14「ジョン・ケージ/南のエテュード」全4集全32曲通奏日本初演へ。天球の南半分の星図を易経で五線譜に変換したという大作。演奏の都合を斟酌しない非人間的メソッドから生まれた怪物的難曲で、左手と右手それぞれに弾くべき音が音域を無視して指定されているようで異常に両手の交差が(しばしば超高速で)求められることになる。各曲ごとに特定の鍵盤に異物を挟むなどの方法でダンパーを開放し、ハーモニクス(倍音)から生まれる残響が曲の背景にテクスチャーを描き出す。とはいえ、ハーモニクスの効果は前半の印象では予想よりもずっと控えめで、曲のダイナミクス(強弱の指定はなく奏者がランダムに決定)も抑制的だったこともあり、意匠はあっても文脈のないストイックな時間が流れることに。しかし後半、進むにつれてよりハーモニクスの効果が豊かに発揮された作品が雄弁に演奏され、次第に音楽は高潮してクライマックスを作り出した。白熱する偶然性。別に素材が星図だろうがなんだろうが偶然性によるものならなんだって質的な違いはないはずなんだけど、ここはあえて南天の夜空に広がる星のきらめきを想起したい。演奏は超難曲を難曲と感じさせないもの。4時間以上の滝行を覚悟して臨んだが、実際には奏者も驚く2時間半ほどで終了。
●アンコールとして、1952年初演時のオリジナル手稿譜を復刻したという「4分33秒」原典版(って。笑)が演奏された。楽譜にドンとtacetって書かれているわけではなく、全8ページある模様。もちろん沈黙が続くのみなんだけど。
●終わった後、開演が「4分33秒押し」だったって知ったんだけど、まったく気づかず。あれ、少し遅れてるかな?とは思った。

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