ドミノ・ピザ
May 2, 2013

『ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた』(青山通著/アルテスパブリッシング)

ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた●ややや。この書影を見ただけでもワクワクする方は多いと思う。『ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた』(青山通著)。ウルトラセブンの最終回「史上最大の侵略」後編のモロボシ・ダンの名台詞、「僕はね、人間じゃないんだよ。M78星雲から来たウルトラセブンなんだ!」に続いて流れる、リパッティ&カラヤンによるシューマンのピアノ協奏曲。このシーンは特撮ヒーロー・カルチャーにおける音楽的ハイライトとして名高いが、本書はまずこの8分間のクライマックスについての詳細な分析から入る。

 457小節、カデンツァ最後のトリルの最中に、ウルトラセブンはアイスラッガーを放つ(譜例5)。
 しかし、それは改造パンドンにキャッチされてしまう。504小節、改造パンドンが投げてきたアイスラッガーをウルトラセブンは切り返し、悲壮な戦いのすえ、かろうじて勝利する。
 そしてシューマンのピアノ協奏曲第1楽章は、ピアノの上昇アルペッジョ(分散和音)からトゥッティによるスフォルツァンド(特に強く)付きの4つの八分音符をフォルテで力強く鳴らし、嵐のようなフィナーレを迎える(譜例6)。
 音楽が終わった。これがほんとうに最後の瞬間だ。 (p.35)


●もしかしたらオリジナルの映像を見るよりも、本書の分析を読むほうが感動するのではないかというくらい、熱い思いによって最終話が再現されている。「ウルトラセブン」の作曲家、音楽監督である冬木透氏への取材により、ここでシューマンが使用された経緯なども明らかになっている。
●この序盤だけでも圧巻なのだが、少年期にこの場面に衝撃を受けた著者は、続いてこの名場面に使用された音楽のレコードを求める旅に出る。曲名がシューマンのピアノ協奏曲だということがわかり、思い切ってレコードを買う。ところがなんということか、レコードから流れる音楽はあの場面とは違う。いや、たしかに同じ曲なのだが、演奏が違う(こういう体験、みんな身に覚えがあると思う)。そこから、クラシック音楽においては、演奏者が異なれば、同じ曲でも異なる音楽が生み出されるという真実が導き出される……そう、これはウルトラセブンとの出会いという個人史を通して語られる秀逸な「クラシック音楽入門」でもあるのだ。一冊の本に、ウルトラセブン論とシューマンのピアノ協奏曲論が併存し、それが画期的な音楽入門書にもなっているという離れ技的一冊。すごい。
●ワタシ自身は著者より少し後の世代なので、リアルタイムの視聴体験があるのは「帰りマン」からで、「セブン」はすべて再放送でしか知らない。それでも震撼させられる。やはり「セブン」は特別なんすよね、シナリオも音楽も。この本にも掲載されていたけど、「狙われた街」でメトロン星人とダンがちゃぶ台を囲んで向き合っている図とか、強烈すぎて忘れられないもの。

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