October 18, 2013

「失踪日記2 アル中病棟」(吾妻ひでお著/イースト・プレス)

失踪日記2 アル中病棟●魂が震えた。読み終えて、今もう一度読み返している。「失踪日記2 アル中病棟」(吾妻ひでお著/イースト・プレス)。前作「失踪日記」も傑作(などと一言では片づけられない問題作)だったが、今回は著者のアルコール依存症入院治療日記が描かれる、ギャグマンガとして。どう考えてもギャグにならないような実体験がギャグとして描かれるというのが壮絶。事実、笑えるんすよ。
●入院患者たちのエピソードが秀逸。特に心に残ったのは、小さなエピソードなんだけど、「床屋」と「歯医者」の話(ネタは割りません)。患者さんたちはみんな禁断症状で苦しみながら「酒!酒!」ってのた打ち回っているのかと思えば、そうではない。むしろ、平然としながら、どこかが普通じゃない。迫力を感じる。
●あと、絵がスゴい。濃密。著者はアルコール依存症で幻覚を見るところまで行ってしまったんだけど、それが吾妻ひでおの絵柄で描かれている。怖い。しかもどのコマも背景までしっかり描きこまれていて、なおかつ一コマあたりの登場人物数が多い。思わず絵を鑑賞してしまう。
●ワタシはお酒をまったく飲まないのに、ぜんぜん他人事のような気がしない。この話にAAの会(アルコホーリクス・アノニマス)とか断酒会の話が出てくるけど、AAの会はスティーヴン・キングの小説とか読んでるとしょっちゅう出てくるから「あ、やっぱり日本でも同じようにやってるんだ」とか思ってしまった。自分だったらAAの会に出席してどんな話をするかなあとか、いつも想像してたくらいなので。体質的に飲めないから飲まないけど、飲めたら自分もあっという間にこんな感じになったんじゃないの、とか思うもの。

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