April 16, 2014

METライブビューイング「ウェルテル」

●15日は東劇でMETライブビューイングのマスネ「ウェルテル」(〜4月18日)。昼と夜の一日2回の上映がありがたい。平日昼でもお客さんは結構入っている。夜の回は通常のコンサートよりかなり遅くなるので、昼の回を歓迎する方も多いのだろう。次作の「ラ・ボエーム」は午前、午後、夜の一日3回上映だそう。METライブビューイング、始まったばかりの頃はガラガラだったのに、まさに「継続は力なり」なのだなあ。
●で、「ウェルテル」は歌手陣がすばらしい。題名役のヨナス・カウフマン、シャルロット役のソフィー・コッシュ、アルベール役のデイヴィッド・ビズィッチ、ソフィー役のリゼット・オロペーサ、全員が役にはまっている。歌えて、なおかつ、その役柄に見える。カウフマンはカッコいいし、ソフィー・コッシュは麗しい。歌唱面でも視覚面でも満足。巨漢の中年男女ががっぷりよつに組み合うラブロマンスになってない。マスネのスコアはスペクタクルに富んでいて、爽快。音楽面の充足度は非常に高かった。しかもリチャード・エア演出の舞台は美しくて、よく工夫されている。
マスネ「ウェルテル」初演ポスター●不足があるとすればストーリーというか、台本、かな(おいおい、原作ゲーテだよ)。少なくともオペラの台本内だけでいえば、苦悩するウェルテルに共感することは難しい。自死オペラはたくさんあるけど、多くは不条理な社会制度とか民族間の対立だとか戦争だとか社会的抑圧とか、いろんな大きな力に引き裂かれながら悲劇的な死へと赴くわけだが、ウェルテルは横恋慕のあげくに「フラれたから」。身勝手すぎる(しかも軽くサイコ入ってて怖い)。命を粗末にしてはいけません。ダメ、ぜったいダメ。ウェルテルって恵まれた身分の生まれなんすよね。それなのにさあ。ソフィーとくっつけばいいじゃん。案外シャルロットよりいい子かもよ。ドヴォルザークだって好きだった女の子の妹と結婚したわけだし(←関係ない)。
●ネタバレするけど(笑)、最後はウェルテルがピストルで自分を撃つ。頭を撃とうとして、ためらって、銃口を心臓にあてて撃つ。ドバッと血しぶきがあがる。ここからなおも延々と歌い続けるウェルテルの粘り強い生命力には驚嘆するほかない。ヴェルディ「仮面舞踏会」に匹敵する、不屈の絶命歌唱が続く。ぜんぜん死なないから、お前さんはゾンビかねと思っていたら、ウェルテルはすくっと立ち上がって「私は死んでいない。これから新しい人生を生きるのだ」とか歌ったので、やっぱりこれはゾンビだと確信した。

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