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August 22, 2014

「おわらない音楽 私の履歴書」(小澤征爾著/日本経済新聞出版社)

私の履歴書 小澤征爾●日経新聞に掲載された小澤征爾の「私の履歴書」が加筆・修正の上、「おわらない音楽 私の履歴書」として書籍化された。さすがに本人が語る言葉だけあって、おもしろい。新聞連載ならではのツルンとした読みやすさもあって、一気に読んだ。小澤征爾本としては以前に「ボクの音楽武者修行」という名著もあって、昔のエピソードなどはこの本などで読んだものと重なるところも少なくないけど、もうそこから時間も経ってるわけで、現時点でのバージョンアップとして、また近年の話題も含めたものとして、貴重な一冊。
●やっぱり若い頃の話のほうがおもしろいのは、「私の履歴書」ならだれであれそうなるのかも。時代の大らかさ、周囲の人々の懐の深さを感じる。特に「N響のボイコット」や「日フィル分裂」の章のインパクトが強い。それにしても「僕には全然経験が足りなかった。ブラームスもチャイコフスキーも交響曲を指揮するのははじめて」という若い指揮者が、N響のツアーや定期演奏会の指揮台に立ってたわけだから、今にして思うと考えられないような時代(60年代前半)である。同時に小澤征爾はその時点でカラヤンの弟子でもありバーンスタインの副指揮者でもあったわけで、なんというか、違う遠近法で描かれた絵を見ているような気分になる。
●ブザンソン国際指揮者コンクールに優勝した直後の話も印象深い。「コンクールに優勝すれば仕事が次々来ると思っていたのに、ほとんどゼロ。人生で一番、不安な時期だった」。でもそこからタングルウッドに渡り、さらにヨーロッパでカラヤンの弟子になるまで約一年。どれだけ濃密な時間が流れていたのかと思う。

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