March 10, 2016

新国立劇場「サロメ」

●9日は新国立劇場でR・シュトラウスの「サロメ」へ。ヤナーチェクの「イェヌーファ」で話題が沸騰している新国だが(←自分の視界のなかで)、並行して「サロメ」も始まった。「イェヌーファ」は明日の最終日に行く予定。
●サロメのカミッラ・ニールント、ヘロデのクリスティアン・フランツ、ヘロディアスのハンナ・シュヴァルツ、ヨカナーンのグリア・グリムスレイ他、充実のキャスト。注目は指揮のダン・エッティンガー。最初、てっきりオケは東フィルかと思ったら、東響なんすよね。エッティンガー指揮東響という珍しいコンビが実現した。アウグスト・エファーディング演出の再演。皇太子殿下ご臨席。
●「サロメ」といえば昨年末にデュトワ&N響の演奏会形式を聴いたばかり。あのときは演奏会形式なのにドラマ性の強さ、各キャラの立ち方が印象に残ったけど、この日は劇場で観ているのにむしろ交響詩を聴くかのように響きの快楽に浸った感。東響の豊麗なサウンドを堪能。
ビアズリーのサロメ●エッティンガーの音楽作りは、鋭く緊迫したもの。一方、舞台上にあったのは血生臭くない「サロメ」だと感じた。過激なエロス&バイオレンス路線に対して無関心な、おどろおどろしさが強調されない「サロメ」。さらに「7つのヴェールの踊り」は妖艶ではなく、むしろ少しコミカルというか(微妙にラッキィ池田入ってた)、あえていえばかわいげがあった。こうなると急にヘロデの視線が父性的なものに思えてくる。あ、ヘロデって妻の連れ子に対する邪な思いから踊りを求めたのではなく、これはお父さんが大好きな娘に「ねえねえ、かわいいから、踊ってよ」ってせがむときの態度じゃないの。だから、娘に駄々をこねられたときに、「そんなのはいけないことだから、エメラルドとかクジャクでがまんして」って諭す。「ハーゲンダッツ、買ってくれるって約束したよ! 買って、ねえ買って!」「ダメダメ、お前はまだ子供なんだからチロルチョコかビックリマンチョコにしなさい」みたいな。家族っていろんな形があるんだよなあ、ほのぼの。演出意図にはぜんぜんないかもしれないけど、ファミリードラマとしての「サロメ」がありうると知った。

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