March 23, 2016

東京・春・音楽祭~ディスカヴァリー・シリーズ vol.3 レスピーギ

東京春祭2016●20日夜は東京・春・音楽祭~ディスカヴァリー・シリーズ vol.3 「レスピーギ/ローマ3部作を生んだ作曲家の知られざる素顔」(上野学園 石橋メモリアルホール)。毎年行われているレクチャー・コンサートのシリーズで、今回はレスピーギがテーマ。「ローマの松」等、大編成のオーケストラ作品ばかりに目が向きがちなレスピーギだが、室内楽曲にもこんなに多彩な作品があるという趣旨で、ヴァイオリン・ソナタ ロ短調、「古風な5つの歌」より第1曲「ときおり耳にするのだ」と第5曲「エンツォ王のカンツォーネ」、「グレゴリオ旋法による3つの前奏曲」より、ダンヌンツィオ「楽園詩篇」より4つの抒情詩、「ドリア旋法の弦楽四重奏」が演奏された。久保田巧(ヴァイオリン)、寺嶋陸也(ピアノ)、与儀巧(テノール)、成田伊美(メゾ・ソプラノ)他。トークと企画構成は原口昇平さん。トークは落ち着いたもので、第1回の頃より話と演奏のバランスが練れていた。
●どれもこれも初めて生で聴く曲ばかりで得難い機会となった。知られざる曲には知られないだけの理由があるのが普通なわけで、次々と未知の傑作を発見したとまでは言わないが、いずれも演奏水準が高く聴きごたえ大。作品として力があるのはヴァイオリン・ソナタ ロ短調で、本当に立派なロマン派ソナタなのだが、フランクやブラームスといった先人たちの影響が色濃く、よくできているけれどどこか借り物ゆえの落ち着かなさも感じる。同じようなことはドビュッシー風味の漂う歌曲にもいえる。なんという器用さ。それに比べると、古楽への関心が原動力となって生まれた「グレゴリオ旋法による3つの前奏曲」や「ドリア旋法の弦楽四重奏」は、自分の道を切り拓いた感があって、作曲家の素顔に触れた実感がわく。

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