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April 14, 2017

新国立劇場「オテロ」 マリオ・マルトーネ演出

●12日は新国立劇場でヴェルディの「オテロ」。演出はマリオ・マルトーネで2009年プレミエの再演。パオロ・カリニャーニ指揮東京フィル。カルロ・ヴェントレのオテロ、セレーナ・ファルノッキアのデズデーモナ、ウラディーミル・ストヤノフのイアーゴ、与儀巧のカッシオ、清水華澄のエミーリア、村上敏明のロデリーゴ他。マルトーネ演出は舞台上に水路を配したもので、これが遠く離れたキプロス島での出来事ではなく、ヴェネツィア当地で起きたこととして置き換えている。その意図をうまく受け止められたという手ごたえはないのだが、あえていえばオテロの異邦人性、社会的孤立が際立つということなんだろうか?
●カリニャーニ指揮東フィルがいい。要所でタメを利かせたドラマティックな「オテロ」。ヴェルディのオペラのなかでも「オテロ」、とりわけ第1幕のシンフォニックで推進力にあふれた音楽は神がかってると思う。
●で、「オテロ」という作品。ここのところワーグナーづいていたからそう思うのかもしれないんだけど、これって「ニーベルングのハンカチ」みたいな話だと思う。魔女が魔法の糸で織ったハンカチには呪いが込められている。オテロがそうデズデーモナに口走ったときって、デズデーモナへの脅しや警告として口から出まかせでそう言ってるのかなと思っていたんだけど(一応リアリズムに則ったストーリーだし)、やっぱりそうじゃないんじゃないか。「マクベス」の魔女と同様に、この魔女は実在しているにちがいない。で、そのハンカチの呪いがオテロやデズデーモナを破滅させる。とすれば、イアーゴ=アルベリヒ。オテロはデズデーモナと愛の力で結ばれて、それゆえに失敗したのに対し、イアーゴはおそらく愛を断念して妻エミーリアと結ばれて、それゆえに成功するという、呪いのハンカチが起こす「ヴェネツィアの黄昏」。
●「オテロ」では、しばしば「イアーゴはなぜ悪事を働いたか」ということが問われる。近年のトレンド(?)としては、イアーゴはオテロを欲していたゆえに、デズデーモナに嫉妬したという解釈があると思う。この一種の三角関係はとても説得力を感じる。イアーゴのオテロへの執着の仕方って、いかにもそんな感じ。ただしマルトーネ演出はオーソドックスなもので、オテロのデズデーモナに対する不信を巧みに視覚化していた。
●この物語のキーパーソンはエミーリア。一見、デズデーモナの忠実な侍女のようでいて、実はイアーゴにハンカチを渡してしまった真犯人。いや、ハンカチを渡すのはしょうがないんすよ、力づくで奪われたらそれまでだから。でも、その後、起きた出来事をデズデーモナに伝えればいいじゃないの。

オテロ 「あのオレが贈ったハンカチをどこにやった!」
デズデーモナ 「あら、あのハンカチならイヤーゴに無理やり奪われたってエミーリアが言ってましたよ」
オテロ 「へー、そうなんだ」

●これで事件は未然に防げたはず。報告、連絡、相談。オペラの登場人物たちには全般に「ほう・れん・そう」が足りない。

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