April 17, 2017

カンブルラン指揮読響の「青ひげ公の城」他

●15日は東京芸術劇場でカンブルラン指揮読響。前半にメシアンの「忘れられた捧げもの」、ドビュッシーの「聖セバスティアンの殉教」交響的断章、後半にバルトークのオペラ「青ひげ公の城」(演奏会形式/字幕付き)。1月のメシアン「彼方の閃光」に続いて、11月に演奏会形式で上演されるメシアンのオペラ「アッシジの聖フランチェスコ」全曲日本初演に向けて期待を高めるようなプログラム。
●圧倒的に感銘を受けたのは後半のバルトーク。「青ひげ公の城」って、オペラといっても登場人物の動きなんてまったくないようなものだから、演奏会形式であることになんの欠落感もない。というか、主役は雄弁な管弦楽。物語も音楽も陰鬱ではあるんだけれど、カンブルラン&読響コンビの鮮やかで澄明なサウンドとのバランスが絶妙。絢爛たる陰惨さとでもいうべきか。イリス・フェルミリオンのユディットとバリント・ザボの青ひげ公も役柄に合致していて吉。強奏時には声をマスクするほど遠慮なくオーケストラが鳴らされたが、ぜんぜんこれでいい。
●で、「青ひげ公の城」。サイコ王子と崖っぷち姫の似合いのカップルによる、ダークサイド版「美女と野獣」。ユディットって人は、ヤバい噂を聞いていながら、婚約者も家族も捨ててわざわざこの城に来ちゃう人なんすよね。お互いが望んでああなったのがこのカップルであって、そういう意味では当事者的にはハッピーエンドのオペラという気もする。
●もともとの「青ひげ」って(ペローの童話だと)、最後の場面で新妻(ユディットに相当する人)の兄弟がズバッとやってきて、青ひげをバサッと倒してしまう。で、青ひげには後継ぎがいなかったので新妻が全財産を相続してウハウハみたいな結末に至る。そう考えるとバルトークのオペラのバラージュ台本はよくできているというか、ずいぶんモダン。

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