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January 4, 2018

「屍人荘の殺人」(今村昌弘著/東京創元社)

●デビュー作で「このミステリーがすごい!2018年版」第1位、「週刊文春」ミステリーベスト第1位、「2018本格ミステリ・ベスト10」第1位の三冠を達成してしまった「屍人荘の殺人」(今村昌弘著/東京創元社)。あまりの評判のよさにつられて読んだが、これはもう驚愕の一冊。大学ミステリ研の登場人物たちが、「雪山の山荘」ならぬ夏合宿のペンションで外界から閉ざされた環境に置かれ、そこで密室殺人が起きる。文体や人物描写もまったくジャンル小説的で、古典的な本格ミステリのパロディのように始まるのだが、途中で世界が一変してしまう。登場人物のひとりにまるでワタシ自身のような人が出てきて、これは自分のために書かれたミステリとしか思えなかった。
●で、うっかりamazonのカスタマーレビューを読むとぜんぶネタバレを書いている困った人がいるので、版元の紹介文を読んで買うと決めたらさっさと買うのが吉。自分は本格ミステリ・ファンではないので、トリックに関してはいくらよくできていても「んなことするヤツがいるかよ」と突っ込まずにはいられないのだが(エレベーターのあれとか)、それでもまったく問題なく楽しめた。ミステリ側からだけではなく、別のジャンルの側から眺めたときにもクラシカルなテイストがあって、読みたかったのはこれだ!と快哉を叫びたくなる。爽快。