ドミノ・ピザ
January 9, 2018

ミステリ批評家ハロルド・ショーンバーグ

●ハロルド・C・ショーンバーグといえばニューヨーク・タイムズで長年活躍した高名な音楽評論家。日本でも「ピアノ音楽の巨匠たち」をはじめ著書が翻訳されているが、著書を読まずとも名前をどこかで目にしているクラシック音楽ファンは多いはず。が、この人が同時に覆面ミステリ批評家としても活動していたことを知っているだろうか。ワタシは偶然知ったのだが、ニューゲイト・キャレンダーの筆名で同じニューヨーク・タイムズのミステリ書評を担当していたというんである。
●どうやってそれを知ったかというと、 ドナルド・E・ウェストレイク著の「踊る黄金像」(木村仁良訳/早川書房)の訳者あとがきにそう書いてあるのを見つけたから。こんな記述だ。

ホセとエドワルドとペドロが飛行機に乗っているとき、「台詞にSの音がないのに、非難の歯擦音を出すのは人間にとって不可能だが、エドワルドはその不可能を実行」する。Sなしの歯擦音を出す(ヒス)は不可能だとしつこく主張しているのは、「ニューヨーク・タイムズ・ブック・レヴュー」のミステリ書評子ニューゲイト・キャレンダーである。キャレンダーはいちおう覆面書評子だが、その正体は音楽評論家のハロルド・シェンバーグなのだ。ミステリ小説の中で音楽や音楽家の話が出てくると、ミステリのことなどはそっちのけで、音楽関係の間違いをアラ捜しする……
(ええい、率直に言ってしまおう)キラワレ者である。

●と、こんな感じで書かれていて、ミステリ批評家としての芸風もなんとなく伝わってくる。Wikipedia英語版でのハロルド・シェンバーグの項によれば、20年以上もニューゲイト・キャレンダー名義でミステリ書評をしていたというのだから、この分野でも十分に実績豊富といっていい。ニューゲイト・キャレンダーという筆名もなんだかいわくありげ。チェス・プレイヤーとしても大した腕前だったというから、ずいぶんとなんでもできる人である。

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