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June 14, 2019

山田和樹指揮読響のゴジラvsカリンニコフ

シン・ヤマカズvsゴジラ●13日はサントリーホールで山田和樹指揮読響。プログラムが快挙。伊福部昭の「SF交響ファンタジー」第1番、グリエールのコロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲(アルビナ・シャギムラトヴァ)、カリンニコフの交響曲第1番。なんと、定期公演で「ゴジラ」を聴けるとは。そして、チラシのデザインが最高にふるっている。「出撃!シン・ヤマカズ」って。シン・ヤマカズvs旧ゴジラ。そして北海道+ロシア・プロとも言える。
●伊福部昭の「SF交響ファンタジー」第1番、これを聴けばどうしたって胸が熱くなるのだが、速めのテンポでぐいぐいと進撃する様は爽快。自衛隊の戦闘機がゴジラにミサイルを撃ち込む様子が目に浮かぶ。曲が終わったら、客席に「イェーイ!」みたいな盛り上がりがあって納得。ていうか、よく考えたらこの曲、客席でコスプレもありえたのだと気づく。前に藤倉大さんが「ソラリス」がどこだったか海外で上演された際に、「こういう作品だと客席にコスプレのお客さんが来てくれて……」みたいなことを言ってたけど、SF/特撮/アニメ系にあるコスプレ・カルチャーって、日本のオーケストラの客層とはまだ遠い感じ。あるいは自分が気づかなかっただけで、客席のどこかに自衛隊コスプレとか「シン・ゴジラ」の蒲田くんコスプレのお客さんがいたのだろうか。
●グリエールのコロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲は、もうひたすら歌手の超絶技巧のために書かれたような作品で、曲はともかく、歌手のアルビナ・シャギムラトヴァがすごすぎる。この曲だけでも相当なものなんだけど、アンコールでアリャビエフ「ナイチンゲール」(夜鳴きうぐいす)を歌って、これでもかというくらいにコロラトゥーラの技巧を見せつける。強烈なヴィブラートでホールの空気がびりびりと振動する。
●後半はカリンニコフの交響曲第1番。この曲は「有名な隠れた名曲」という不思議なポジションを確立している。あるいは、「みんなに人気の隠れ家レストラン」というか。ネーメ・ヤルヴィとN響で聴いたのは3年前。聴けないようで、意外と聴ける。古典的な交響曲のフォーマットにロシア民謡風のメロディが散りばめられた、本当によくできた曲。チャイコフスキーの前半3曲の交響曲が少し近いか。あの民謡風主題は、元ネタの民謡があるのか、それとも作曲者の創作なのか、どっちなんだろう。創作だとしたらドヴォルザーク級のすごさ。曲の出来ばえからするともっとメジャーになってもよさそうなのに、なぜかマイナー感がついてまわる謎。真摯な演奏で、推進力にあふれ、熱量も十分。ひたすら楽しい一夜。