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July 31, 2019

ゾンビとわたし その39:山、そして「アイ・アム・ア・ヒーロー」最終巻

●先日、アメリカのコーネル大学の研究で、全米でゾンビ禍が発生した場合、ゾンビがそのように広がるかをシミュレーションしたところ、最適な避難場所は北ロッキー山脈だという結論に達したという記事を読んだ(もしもゾンビが大量発生したらどうする?疫学的に正しい安全な避難場所を割り出した研究)。ニューヨークでゾンビが発生した場合、ヤツらが田舎に到達するまでに数週間、北部の山間部なら数か月の時間的猶予があるという。人口密度の高い大都市部ではあっという間に伝染するが、案外と田舎への到達は時間がかかる。ゾンビ禍においては、空気感染や他の動物を媒介とした感染が起きない。人と人との直接的な接触があって初めて感染が起きる。だから感染速度は人口密度に著しく依存するわけだ。当連載では早くから、「人口密度が非常に低く、なおかつ自然環境が過酷ではない」という理由で、低山が避難場所に最適ではないかと指摘してきたが、シミュレーションでもやはり似たような結論に達したことになる。もちろん、山がいいと言っても、いざというときにそこまでどうやって移動するのかという難問は残るわけだが。
●すでに完結したコミック「アイ・アム・ア・ヒーロー」(花沢健吾著著)では、終盤でゾンビ(このストーリーではZQNと呼ばれる)たちが次の形態へと向かって変貌していく様子が描かれていた。で、最後はどうなったのか。主人公である鈴木英雄は東京都心でひとり生き残る。ほかに重要なサブストーリーがあるのだが、都心部においては人もゾンビもいない孤独な環境で、主人公が生存している。その光景は映画「アイ・アム・レジェンド」で描かれたニューヨークにそっくり。で、そもそも題名が示す通り「アイ・アム・ア・ヒーロー」は「アイ・アム・レジェンド」へのオマージュだったことに気づく。この最終シーンは連載開始時から考えてあったのかも。ただし、これは単にウィル・スミス主演の映画に捧げたものではないはず。おそらく、その原作であるリチャード・マシスン著「アイ・アム・レジェンド」(旧題「地球最後の男」)へのオマージュと考えるべきなんだと思う。なぜならマシスンの小説はあらゆる「ゾンビ」もののルーツといえるので。この小説では災厄はゾンビではなく吸血鬼によってもたらされるのだが、噛みつくことで人から人へと吸血鬼性が感染していくのは同じ。つまり、ゾンビのご先祖様は吸血鬼ということになる。

>> 不定期連載「ゾンビと私