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December 1, 2019

アレクサンドル・タロー 「ヴェルサイユ」


●29日はトッパンホールでアレクサンドル・タローのピアノ・リサイタル。最新アルバムと同じく「ヴェルサイユ」と題された公演で、ラモー、クープラン、ロワイエ他のフランス・バロック名曲集。小曲ばかりなのに、なぜか本人の希望により休憩なし。全体を貫く一本の大きなドラマがあるとは思えない内容なので、どういう意図なのかよくわからないが、曲の配列がよかったのか、結果的に問題なし。なお、ピアノはヤマハCFXを持ち込んで使用。
●まずは幕開けの音楽ということで、リュリ(タロー編)の「町人貴族」より「トルコ人の儀式のための行進曲」。いきなり愉快。続いて、クープランのクラヴサン曲集から「ロジヴィエール(アルマンド)」「神秘的なバリケード」「パッサカリア」「さまよう亡霊たち」「ティク・トク・ショック、またはオリーヴしぼり機」。タロー十八番の「ティク・トク・ショック」、いろんな人が弾いてるとは思うけど、タローの「持ち曲」みたいなイメージになっている。ところで前から謎なんだけど、この「ティク・トク・ショック」っていうのは「オリーヴしぼり機」とやらが動く際の擬音ということなんだろうか? そもそも Les maillotins が「オリーヴしぼり機」なのがよくわからない。画像検索しても棍棒とか斧みたいな形状のものが出てくるのだが、オリーブをしぼるためのメカニズムとして棍棒状のパーツを用いた「しぼり機」があったのか?
●と話がずれてしまうが、これに続いたのがロワイエのクラヴサン曲集第1巻より「愛すべき」「スキタイ人の行進」。この「スキタイ人の行進」が痛快。これもタローにぴったりの曲で、第二の「ティク・トク・ショック」というか、運動性とユーモアが同居した名演。ここで思い切りはじけて、盛り上がったところでようやく立ち上がって拍手を促して袖へ。遅刻したお客さんを入場させると同時に、客席にもプログラムの切れ目を知らせる。
●続いて、ラモーの「プレリュード」「鳥のさえずり」、バルバートルの「ラ・シュザンヌ」、デュフリの「ラ・ド・ブロンブル」「ラ・ポトゥワン」。ここでまた立ち上がって一息入れて、ラモーの新クラヴサン組曲より、アルマンド、クーラント、サラバンド、小さなファンファーレ、ガヴォットと6つの変奏。これも録音が既出だが、ライブならではの熱い演奏でノリノリ。全体としてモダンピアノのダイナミズムときらびやかな音色を最大限に生かした演奏で、曲のユーモアとエレガンスを拡大したコントラストの強い表現。オシャレ悪ノリというか。
●アンコールではメモを読みながら日本語で曲名を案内する茶目っ気も披露。ラモーの「未開人」、スカルラッティのソナタ ニ短調 K141、ロベール・ド・ヴィゼのサラバンドの3曲。スカルラッティは羽目を外して大はしゃぎするかのよう。執拗さが笑いに通じる曲。タローは終始ご機嫌で、どうしちゃったのかと思うほどハイテンション。こんなキャラだったっけ?と思わなくもないけど、今季随一の楽しさ。