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May 15, 2020

「7日間ブックカバーチャレンジ」まとめ

●出かけられないならお家で読書をしよう!ということなのか、SNS上で「7日間ブックカバーチャレンジ」が流行している。毎日一冊ずつ、お気に入りの本をコメントなしで表紙だけ載せて、7日間経ったらだれかにバトンを渡す、というのが基本ルール。といっても大半の人はなんらかのコメントを添えている。せっかくなので、自分が挙げた7冊をここにも置いておく。パッと本棚を眺めて目に入った、「これ最高におもしろかったなー」という7冊。あえて音楽書は選ばず。
●Day1 まずはイアン・マキューアンから1冊選ぶとすると「ソーラー」。最高にイジワルなんだけれど、実は愛のある名作。最後のページで震えた。

●Day2 傑作ぞろいのカズオ・イシグロのなかにあって、たぶん、あまり人気がないのがこの「充たされざる者」。でも最強の野心作。音楽家小説でもあり夢小説でもあり。

●Day3 予言的な終末小説を山ほど書いたJ.G.バラード。なかでも忘れがたいのが「楽園への疾走」。歪んだ環境保護運動からここまでの狂気を描き出すとは。閉ざされた社会であらわになる人間の本性を描くのがバラード。それが高層マンションなら「ハイ・ライズ」、高級リゾート地なら「コカイン・ナイト」、南国の孤島なら「楽園への疾走」。少年と成熟した女性の物語でもある。

●Day4 スポーツ・ノンフィクションの名著「マネー・ボール」。表側から見れば野球に統計学を持ち込んで割安な選手で勝利するというスポーツビジネスの成功譚なのだが、裏側から見ればスポーツ観戦オタクにとってのロマンそのもの。痛快。

●Day5 サイモン・シンほどわかりやすくておもしろい科学ノンフィクションの書き手を知らない。「代替医療のトリック」「宇宙創成」「フェルマーの最終定理」、どれもエキサイティングだったが、楽しさで一冊選ぶなら「暗号解読」。ナチス・ドイツの暗号機エニグマから古代文字「線文字B」の解読、さらには今日の量子暗号まで。量子暗号ってそういう原理か!と納得して、読んだ後すぐに忘れる……。

●Day6 ド定番、ガルシア=マルケスの「百年の孤独」。ワタシが読んだのは「新潮・現代世界の文学」の一冊で、本当は昔の装幀が懐かしいんだけど、今は新訳が出ている。学生時代に読んで頭が真っ白になった。途中から止まらなくなり猛スピードで読んでしまったので、いずれ落ち着いて再読を……と思いつついまだ果たせず。というか、今こそ読むべきなのかも。ちなみにこの名作の火星バージョンとも呼ぶべきイアン・マクドナルドの「火星夜想曲」も好き。

●Day7 ホラーの大巨匠キングに敬意を払って、ラストは「ニードフル・シングス」。一頃キングにハマって初期~中期の代表作は一通り読んだが、どれも本当におもしろい。読後感のよさで一作選ぶとこれ。「シャイニング」「呪われた町」「ミザリー」「IT」、みんなことごとくエンタテインメントに徹しているのが吉。ただ悲惨な話など読みたくないわけで、キングの「口当たりのよい怖さ」は一種の発明だと思う。