September 8, 2020

「1793」(ニクラス・ナット・オ・ダーグ著/小学館)

●スウェーデン産のミステリ小説「1793」(ニクラス・ナット・オ・ダーグ著/小学館)を読んだ。舞台は1793年、歴史小説の趣もあり。というのは前年の1792年、国王グスタフ3世が仮面舞踏会で暗殺されているんである。そう、あのヴェルディのオペラ「仮面舞踏会」で描かれた事件だ。未知の作者のミステリを手にとったのもこのオペラとの関連があったからこそ。ヴェルディの「仮面舞踏会」は検閲対策のために舞台をイギリス植民地時代のアメリカに変更し、主人公をスウェーデン国王ではなくボストン総督にして初演にこぎつけたわけだが、あのオペラには占い師ウルリカが登場する。このウルリカという人物は、グスタフ3世時代の実在の占い師で、この「1793」でもほんの一文ながら言及される場面がある。ほかにも当時のスウェーデンのコーヒー熱がうかがい知れる場面が随所にあったり、時代描写として興味深いところ多々。1793年に設定されているのは必然があって、この年にはマリー・アントワネットが処刑されている。
●で、ミステリ小説としての感想を一言でいえば、「おもしろいけど趣味が悪い」。舞台がこの時代なので残忍さや容赦なさが横行するのはしょうがないかもしれないんだけど、登場人物の境遇の厳しさゆえに途中で「もう読むのを止めようかな」と何度か思った。でも、筆力がやたらと高くて、結局最後まで止められなかったので、おもしろいのはまちがいない。あと、たぶん、この小説はシャーロック・ホームズへのオマージュでもある。ホームズ役とワトソン役がコンビを組むというだけではなく、第2章に入るとぜんぜん別の登場人物の話になってしまい、後で両者が合流するという構成が、ホームズの長篇とそっくり。

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