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May 12, 2021

「RESPECT 監督の仕事と視点」(反町康治著/信濃毎日新聞社)

●「RESPECT 監督の仕事と視点」(反町康治著/信濃毎日新聞社)を読んだ。反町康治元松本山雅FC監督が監督就任中に地元新聞に寄稿していた連載をまとめた一冊。実はこの続編である「RESPECT2 監督の挑戦と覚悟」が最近刊行されたところなのだが、どうせ読むなら前編からと思って読んでみた。2012年、松本山雅の監督就任時から2016年開幕時まで、月イチペースで監督のサッカー論、指導者論などが綴られている。当初はプロとは呼べないような集団だったチームが次第に成長し、自らを律する真のプロ集団に変貌するまでの記録であり、この間、松本山雅はJ2からJ1に昇格し、そして一年でJ2に降格している。J1の壁に跳ね返されたとはいえ、地域の新興クラブによるまれに見る快進撃が成し遂げられた。
●読んでいてなんども感じたのは、反町監督の真摯さ、厳しさ、そしてフェアプレイへのこだわり。フェアプレイが好成績に結び付くと信念をもって語れる監督はなかなかいない。そして、現にこの人ほどJリーグで結果を残してきた日本人監督はまれ。新潟であれだけ成功して、さらに松本でもやはり同じようにチームのレベルを引き上げたのだから、並外れている。オシムから強い影響を受けているのもおもしろい。あと、印象的だったのは、選手の給料を知らないという話。クラブが作る選手資料からわざわざ給料の欄を消してもらっているという。選手全員をフラットな目で見る姿勢が徹底している。
●この本でも回想されているけど、選手時代の反町康治といえば会社員Jリーガーとして話題を呼んだのを思い出す。日本に念願のプロリーグが誕生して、みんながこぞってプロ契約をするなかで、反町は実業団時代と同じく全日空の社員の身分のままフリューゲルスでプレイした。傍目には、バブリーで先行きの不透明なプロリーグに身を投じるよりも、定年まで身分が約束される会社員のほうがいいという判断のように見えたけど、結局、退社してベルマーレでプロ選手としてキャリア最後の数年を過ごした。そんな異色の選手が、時を経て日本を代表する名監督になったのだから、わからないもの。
●続編も読むしか。また遠からずアルウィンで山雅の試合を観戦したい。あの専用スタジアムはうらやましい。

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