May 18, 2021

「現代音楽史 闘争しつづける芸術のゆくえ」 (沼野雄司著/中公新書)

●遅まきながら読了、「現代音楽史 闘争しつづける芸術のゆくえ」 (沼野雄司著/中公新書)。20世紀から21世紀初頭にかけての音楽の歴史を新書一冊のコンパクトサイズで概説する。これは必携の一冊。なにしろ類書がない。20世紀音楽史についての本はいくつもあるが、2021年を迎えた現在、それらは現代の音楽についての本とは言いがたい。新しくて、コンパクトな現代音楽史がずっと待たれていた。この「現代音楽史」のすばらしいところは、なんといっても新書一冊分にまとまっているところ。過去の歴史についての記述を簡潔にまとめることはできても、最近の動向を限られた文字数で記すのは至難の業。それを実現している。
●前半、20世紀中盤くらいまでは、著者ならではの明快な視点で大きな歴史の流れが記され、後半で時代が新しくなると、ストーリー性よりも具体的な作曲家名や作品名をたくさん盛り込むことが優先され、リスナー向けガイドの性格を帯びてくる。聴いたことがない曲、知らない曲を聴きたくなる。ここに挙がっている曲をぜんぶ聴けるSpotifyのプレイリストがあったらいいのに!
●この本の前書きにも書かれているけど、今は録音でよければ、SpotifyとかYouTubeでいろんな曲が聴ける時代。以前だったら、未知の作曲家や作品のCDを前にして、ショップで延々と買うか買わないか迷わなければいけなかったのが、今は即座に聴ける。現代音楽を聴くためのハードルは格段に下がった。聴きはじめて、趣味に合わないなと思ったら途中で止めて、それっきりにもできる。そこで感じるのは、こういったわがままな聴き方が一般的になったことで、より多くの人が知られざる作品に触れるチャンスを得たと考えるべきなのか、あるいは実はその逆で、膨大な音源のなかでより埋もれやすくなっていくのか、どちらなのかなということ。これは現代音楽だけじゃなくて、クラシック全般についてもいえることなんだけど。

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