May 20, 2021

「欧州 旅するフットボール」(豊福晋著/双葉社)

●サッカーには「観る楽しみ」「蹴る楽しみ」に加えて「読む楽しみ」がある。日本語で読めるサッカー本だけでも相当な厚みと質の高さがあって、これほど「書く文化」が発達している競技がほかにあるだろうかと思う。2014年にはサッカーに関する書籍を対象とした「サッカー本大賞」まで創設されている。
●で、「サッカー本大賞」2020年度受賞作の「欧州 旅するフットボール」(豊福晋著/双葉社)を読んだ。バルセロナ在住のサッカー・ジャーナリストの著者がヨーロッパ各地を旅したサッカー紀行。フットボールが根付いた街の情景が美しく切り取られていて、旅の気分を味わえる。クラブや選手の話題のみならず、その街に暮らす人々や食文化、風景が浮かび上がってくる。文体が端整で、読み心地がいい。
●やはり日本人選手を獲得したクラブが取材対象となることが多いのだが、その街がどんなところかは、勝敗中心のスポーツ報道だけではわからないもの。たとえば、岡崎慎司が奇跡のプレミアリーグ優勝を果たしたレスター。レスターは英国一の移民の街で、人口30万人の半数が英国にルーツを持たないという。インド料理屋がひしめく。インド系、東南アジア、東アジア、いろんなルーツの人がいて、レスターのオーナーはタイの富豪。そんな街でヴァーディやカンテやマフレズや岡崎がおとぎ話の主人公となったわけだ。プレミアリーグはどのチームも多国籍多民族集団だけど、レスターには特別な背景があったのだなと知る。あと、中村俊輔が最初に欧州に渡った街、イタリアのレッジーナ。ここはマフィアの街で、みかじめ料を払っていない店が爆破されたりするような事件が日常茶飯事だったとか。当時、まだ逞しさを身につけておらず、内気な青年に見えた俊輔がここでどんな奮闘をしていたのか、思いを馳せる。

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