January 3, 2022

「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」1~3 (奥泉光著/文春文庫)

●年末年始に一気に読んでしまった、奥泉光著「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」、「黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2」、「ゆるキャラの恐怖 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活3」(以上文春文庫)。有能すぎるほど有能なAmazonのレコメンド機能が最近文庫化されたシリーズ第3作をオススメしてきたのだが、どうせ読むなら第1作からと思って、3冊まとめて読んでしまった。めっぽうおもしろい。
●ジャンルとしてはユーモアミステリということになるのかな。主人公は底辺大学で日本文学の准教授を務める桑潟幸一。学生のレベルが最底辺なら教員も教員で一切の向学心がなく、授業は「寅さん」を見て感想を書けとかそんなレベル、研究など言語道断、ただひたすら保身にしか関心がなく、しかもそのしがみついている地位というのがコンビニのバイトと変わらない低賃金で、汲々とした暮らしを送っている。学生から寄せられる尊敬はゼロ、文芸部の顧問をするも学生たちの言いなりになるばかりの便利な教員。はなはだ自虐的なトーンで描かれているのだが、これがぜんぜん嫌な感じがしない。むしろ「そうだよなあ、人間みんなそういうものだよなあ」と己の中に住むダメ人間が全面的に共感してしまう。イジワルでありつつハートウォーミングという絶妙なバランス感が保たれている。毎回、小さな事件が起きるのだが、主人公の役割はホームズでもなければワトソンでもなく、ただ右往左往している間に学生が事件を解決してしまう。学生たちの会話がぶっ飛んでいて真に笑える。しかも主人公の業務の大半が受験生獲得のための営業に費やされていたりとか、大学の運営がすっかり民間教育産業頼みになっているあたりの描写とか、けっこうきわどい。
●この主人公、だいぶ前に読んだ同じ著者の「モーダルな事象」に登場してたのを覚えている。そこから少し雰囲気が変わって、独立したシリーズになっている模様。主人公は風采のあがらないしょぼくれたオッサンだと思っていたのに、なんだか表紙絵がステキすぎるような気が。

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「謹賀新年2022」です。

次の記事は「東京国立近代美術館 MOMATコレクション ギーゼキング演奏会のプログラムノートとポスター」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ