February 28, 2022

鈴木秀美指揮神戸市室内管弦楽団の「コジ・ファン・トゥッテ」

神戸文化ホール
●週末は神戸へ。神戸文化ホールで鈴木秀美指揮神戸市室内管弦楽団のモーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」(演奏会形式/抜粋)。「よりぬき コジ・ファン・トゥッテ」と題されているのだが、かなりのところまで欲張って収めた2時間半で、朝岡聡さんの語りでストーリーを補強したこともあり不足感はなし。オーケストラの後ろに一段高いステージを組んで、歌手がしっかり演技もするセミステージ方式。なんと、これが神戸市室内管弦楽団の定期演奏会として開催されている。1981年に神戸室内合奏団としてスタートした同楽団は、2018年にホルンとオーボエを加えて神戸市室内管弦楽団と改称、2021年より鈴木秀美が音楽監督に就任している。
●序曲からオーケストラが精彩に富んでいて引き込まれる。HIPなスタイルでオペラを聴ける機会は貴重。モーツァルトのオペラはオーケストラの軽やかさと躍動感があってこそ。歌手陣も充実。中江早希のフィオルディリージ、染谷熱子のドラベッラ、伊原木幸馬のフェルランド、加耒徹のグリエルモ、氷見健一郎のドン・アルフォンソ、宇佐見朋子のデスピーナ。個々のアリアも重唱の楽しさもたっぷり。大活躍中の中江早希、加耒徹はさすがの存在感。たぶん初めて聴いたと思うけど、伊原木幸馬は甘くリリカルな声質が魅力。全体に若々しさ、軽快さがあったのが吉。特に変装後のフェルランドとグリエルモの口説き合戦が秀逸。ふたりともチャラチャラした感じの調子こいた若者に変身していて、ホント、この話はそういうノリだよなあと痛感する。「コジ」はこの二人の役柄にオッサン感が出ると、なんか不潔な感じの話になるのがヤなんすよね。チャラい若者だから成立する。
●客席の雰囲気がいくぶん大らかな感じなのもよかった。アリアの後、ぜんぶ後奏が終わるのを待たずに拍手が出る感じとか、カーテンコールで出てしまったブラボーの掛け声とか(係員が飛んでこなくてほっとした)。
●ダ・ポンテ三部作はどれもそうなのだが、ストーリーのひきが強く、最初はドラマにぐっと引き込まれるのだが、途中からもうモーツァルトの音楽がすべてで話はどうでもよくなってくる。「フィガロ」がいちばんその傾向が強いけど、「コジ」でもやっぱりそうなる。

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