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August 29, 2022

クセナキス100% ~ サントリーホール サマーフェスティバル 2022

●26日はサントリーホールのサマーフェスティバルへ。クセナキス生誕100周年プログラム「クセナキス100%」。ザ・プロデューサー・シリーズ「クラングフォルム・ウィーンがひらく」の一公演。前半が6人の打楽器奏者のための「ペルセファッサ」、後半がオーケストラとテープのためのバレエ音楽「クラーネルグ」。
●きっと峻烈で強靭なサウンドが連続するはず、特に後半は75分ほどの長丁場であるからと滝に打たれる覚悟で臨んだが、むしろかなり楽しく、イベント性に富んだ一夜。「ペルセファッサ」はイサオ・ナカムラ、ルーカス・シスケ、ビョルン・ヴィルカー、神田佳子、前川典子、畑中明香の6人の奏者が客席を囲む形で陣取り、空間配置が全面的に生かされる。烈々とした太鼓の打音が醸し出す荘重さ、きらめく金属音の祝祭性、ホイッスルがもたらす笑い、熱風のようなフィナーレ。スリリングではあるけれど、背後に一貫したリリシズムみたいなものも感じる。
●後半、「クラーネルグ」はエミリオ・ポマリコ指揮クラングフォルム・ウィーンの演奏。舞台下手に弦楽器群、上手に管楽器群が配置され、これにアンサンブルの録音をもとにした電子音響が加わる。スピーカーが客席を囲むように配置。舞台上の生演奏と電子音響が組み合わされる。生演奏に対して電子音響は遠くで反響するようなバランスなので、舞台上の演奏に対するエコーのようでもあり、こちらの世界とあちらの世界の交話のようでもあり。序盤は生演奏が中心だが、途中から両者の絡み合いが増える。指揮台にはデジタル表示のストップウォッチが置かれ、生演奏部分では停止し、電子音響が入ると動く。タイムで同期が保たれている模様。不思議な陶酔感がある。終盤の20分くらいになると、ほとんどの時間が電子音響になって、舞台上の奏者はやることがない。で、時差ボケなのか眠そうにあくびを連発している奏者すらいるくらいなのだが、それでも完全にお休みではなく、突然演奏しなきゃいけない部分があったりして油断できない。休みのようでいて休みでない、奏者がいなくていいようで帰れない。まるでハイドン「告別」の裏返しバージョンのような。
●なぜ「テープ」という言葉が録音を含意するのか、そろそろ説明が必要な時代が来つつあるかもしれないと、ふと思う。

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