September 5, 2022

山田和樹指揮日本フィルの貴志康一&ウォルトン

●2日はサントリーホールで山田和樹指揮日本フィル。貴志康一のヴァイオリン協奏曲(田野倉雅秋)とウォルトンの交響曲第1番という攻めたプログラム。日フィル定期は同一会場2公演あるわけで、これで客席が埋まるかといえば埋まらない。でも、強い信念が伝わってくる。ともに1935年に書き上げられた作品ながら、その手触りはまったく違う。
●貴志康一のヴァイオリン協奏曲は、ロマン派協奏曲の枠組に日本の民謡風の楽想が織り込まれたもの。スタンダードな形態にローカルな素材の融合が図られているという意味では王道。26歳でこの曲を書いて、28歳で早世してしまったので、本来であればこの先に独自の世界が切り拓かれていたはずと思わずにはいられない。日本フィルのソロ・コンサートマスター、田野倉雅秋が渾身のソロ、カデンツァも鮮烈。
●後半、ウォルトンの交響曲第1番は最強に強まっていた。エネルギッシュで輝かしく、前へ前へと進む力にみなぎっている。レトロフューチャー風味のスーパー・ポジティブ・シンフォニーで、中二病がぶり返してきそうなカッコよさ。パワフルではあるけれど、決して荒っぽくならず、バランスが保たれていたのが吉。前半ソリストがそのままコンサートマスター席に座って獅子奮迅の働き。ニールセン「不滅」ばりの2台ティンパニも熱い。この曲、前回聴いたのはたぶん2013年の尾高忠明指揮N響。もっと聴きたくなる。
●熱心な拍手が続き、楽員退出後、まずはコンサートマスターが登場、続いて指揮者が姿を見せて、ふたりでカーテンコール。充実の一夜。

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