●ゴールデンウィークはラ・フォル・ジュルネTOKYOへ。昨年と一昨年はほんの少ししか公演を聴けなかったのだが、今回はけっこう聴けた。有料公演の会場は昨年と同じくホールA、C、D7、G409。これが現在の適正規模なのだろう。LFJは大きなホールはファミリー層やライト層向けのプログラム中心、小さな会場は通好みのプログラム中心という二段構えになっていると思うのだが、その両方を行ったり来たりできるところが好き。
●で、聴いた公演からとくに印象的だったものをいくつか。まず3日の角田鋼亮指揮セントラル愛知交響楽団による「0歳からのコンサート」。田中研のはきはきした司会がよい。この巨大ホールで子どもたちの注意をステージにひきつけるのは大変なこと。テーマはウィーン。ヨハン・シュトラウス2世の「観光列車」では、角田鋼亮が帽子をかぶって車掌さんになりきり、要所要所で「ピピー」と警笛を吹く。「雷鳴と雷光」ではシンバル奏者が客席内を歩き回りながら、雷を鳴り響かせる。初期の頃には「0歳児にコンサートなんて」みたいな声もあったこの企画だが、回を重ねるたびに工夫が凝らされ、音楽祭に不可欠のものになった。もちろん、演奏中もずっと赤ん坊が泣いている。それをみんなでにこにこして見守るのがこの空間。
●演奏水準の高さでインパクトを残したのは、ヴァイオリンのエスター・ユーとピアノのジェホン・パクのコンビ。ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ、グリーグのヴァイオリン・ソナタ第3番、ヴュータンのアメリカの思い出(ヤンキー・ドゥードゥル)。会場のG409は残響の乏しい会議室だが、まるで大ホールで演奏するのかのように雄弁。磨き上げられた音色と切れ味の鋭さで、とくにグリーグは見事。エスター・ユーはアメリカ出身、韓国系。
●G409では5日にオリヴィエ・シャルリエのヴァイオリンと阪田知樹のピアノで、ラヴェルのヴァイオリン・ソナタとガーシュウィン(ハイフェッツ編)の「ポーギーとベス」も堪能。ニューヨークで会ったラヴェルとガーシュウィンのふたりに着目した好プログラム。ハイフェッツ編の「ポーギーとベス」がカッコいい。この編曲はいきなり「サマータイム」で始まる。「キャットフィッシュ・ロウ」が出てこない。
●ホールCで福間洸太朗によるウィーン・プログラム。モーツァルト、ブラヘトカ、コルンゴルトと来て、シェーンベルクのピアノ曲断章からつなげてラヴェルの「ラ・ヴァルス」に入った瞬間がハイライト。ぞくっ。
●ホールDの北村朋幹は、1972年12月にバリ島をともに旅した3人の作曲家に焦点を当てて、武満徹「フォー・アウェイ」、クセナキス「エヴリアリ」、ジョラス「ソナタのためのB」。壮絶。最高だった。セルフ譜めくり方式で、楽譜を切り貼りしてあったのだが、「エヴリアリ」でめくるときに紙片が剥がれて落ちる場面あり。アンコールにバルトークの「ミクロコスモス」第4巻「バリ島から」。「エヴリアリ」の途中で退席する人をみかけた。ベッツィ・ジョラス、検索したら98歳で存命のようだ。
●ネオ屋台村で昨年に続いてMIKAバインミー。おいしい。
●今回も当日配布プログラムの曲目紹介原稿をいくつか書いた。無署名原稿。
May 7, 2025