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May 14, 2025

ミハイル・プレトニョフ指揮東京フィルのショパン&チャイコフスキー

ミハイル・プレトニョフ 東京フィル
●13日はサントリーホールでミハイル・プレトニョフ指揮東京フィル。前半が松田華音のソロでショパン(プレトニョフ編)のピアノ協奏曲第1番、後半がチャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」プレトニョフ特別編集版。前後半にわたるプレトニョフの芸術というべき一夜。ショパンのピアノ協奏曲第1番は簡素なオーケストレーションが議論を呼ぶ曲だが、プレトニョフはそこに入念なオーケストレーションを施した。管楽器が活躍する場面が格段に増えて、オーケストラの色彩感が豊か。水彩画が油彩画になったくらいの違いがある。原曲はなぜかトロンボーン1という珍しい編成だが、これをカットして、ホルン4の二管編成。なるほどと思ったのは第3楽章冒頭で、独奏ピアノのクラコヴィアクの主題に対して、オーケストラが管楽合奏で応答する。ひなびた民俗舞曲と思えば納得。スケルツォ楽章のトリオみたいな田舎感。プレトニョフ節全開のオーケストラに対して、松田華音のソロも負けていない。ショパンとは繊細華麗で軽快なものという先入観を覆すかのように、強靭苛烈で、ヴィルトゥオジティを前面に押し出す。重く、彩度を抑えたタッチ。第2楽章はかなり遅い。ソリスト・アンコールにプレトニョフ編のチャイコフスキー「くるみ割り人形」組曲より間奏曲(アンダンテ)。アンコールまでプレトニョフ仕様の徹底ぶり。
●後半、チャイコフスキーの「眠れる森の美女」プレトニョフ特別編集版は、バレエの第3幕を使わず、プロローグ、第1幕、第2幕から本来の順序に従って選曲した抜粋版。金管楽器が豪快に鳴り、輪郭はシャープで、キレがあり、力強く壮麗な交響的舞曲といった趣。コンサートマスターの依田真宣が立奏で堂々たるソロ。鮮やか。盛大な喝采にこたえて、アンコールとして第1幕のパ・ダクシオンよりアダージョ。当初、本編のおしまいに演奏される予定だった曲だが、アンコールとして演奏された。
●東フィル名誉音楽監督チョン・ミョンフンが2027年からミラノ・スカラ座音楽監督に就任するというニュースがあった。シャイーの後継者。アジア人がスカラ座の音楽監督に就任するという視点で見れば驚きだが、ジュリーニの愛弟子が就任すると見れば納得しかない。共演歴も多い。

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