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May 23, 2025

コンポージアム2025 ゲオルク・フリードリヒ・ハースの音楽

●22日は東京オペラシティでコンポージアム2025「ゲオルク・フリードリヒ・ハースの音楽」。近年、自分はコンポージアムにはあまり足を運んでいなかったのだが、ハースだったら聴きたいと思い久々に。ハースは基本的に聴きやすそうだし、今年は下野&都響のスペクトル楽派特集もあったので、そのシリーズみたいな気持ちもあり。出演者はジョナサン・ストックハンマー指揮読響と、アルプホルン4人組のホルンロー・モダン・アルプホルン・カルテット。プログラムは前半にメンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」、マーラーの交響曲第10番から「アダージョ」、後半にハースの「... e finisci già?」~オーケストラのための(2011)日本初演、ハースのコンチェルト・グロッソ第1番~4本のアルプホルンとオーケストラのための(2014)日本初演。
●前半、メンデルスゾーンは響きのバランスが独特で、彫りの深い音楽。弦楽器が対向配置で、コントラバスを後方に横一列に並べる方式。マーラーはすっきり。マーラーが沈みゆく音楽だとすると、後半のハースの「... e finisci già?」は昇ってゆく音楽。微細で緻密な響きの集積体が曙光のようにホールを満たす。弦楽器が天に舞い上がって消えるような終わり方がかわいい。しかし、この曲名は日本語に(あるいはカタカナでもいいので)訳してほしかった。イタリア語らしいのだが、読めない曲名は記憶に決して留まらない。続くコンチェルト・グロッソ第1番は、アルプホルンのカルテットが独奏楽器群を務める。アルプホルンは巻いていない巨大な直管ホルンで、バルブ装置もなにもない(替え管があって、なんどか付け替えていた)。なので原理的には自然倍音列しか出ないと思う。バロック期の合奏協奏曲はソロとトゥッティの対比が肝だが、たぶんここでもそこは同じで、アルプホルンの自然倍音列とオーケストラの平均律の世界の対照という発想があるのだろう。両者が作り出す「ずれ」とかうなりみたいなところに着目しているのかなと察するものの、聴くとなればたゆたうような響きの海にただただ身を浸すばかり。ときおり船酔いみたいな気分を楽しみながら、30分ほどの心地よい音浴。
●カーテンコールで客席から作曲者のハースが登場して、大喝采に。うれしそう。よく見る「アー写」よりも年齢が上に見えて驚いたけど、71歳と知って納得。しかし現代音楽って新しい音楽のはずなんだけど、大舞台で脚光を浴びるのはもっぱら大ベテランだなーとは感じる。指揮者の世界がどんどん若い人にシフトしているのとは対照的。