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May 27, 2025

トーマス・ヘル プロジェクト 2025 I リゲティ&バルトーク

TOPPANホール トーマス・ヘル プロジェクト 2025
●26日はTOPPANホールで「トーマス・ヘル プロジェクト 2025」。ピアノのトーマス・ヘルを中心とした二夜にわたるシリーズで、第1夜「リゲティ&バルトーク」に足を運ぶ。プログラムはリゲティ「ムジカ・リチェルカータ」、バルトークのヴァイオリン・ソナタ第2番(山根一仁&ヘル)、バルトークの2台ピアノと打楽器のためのソナタ(ヘル、谷口知聡のピアノ、竹原美歌、ルードヴィッグ・ニルソンのパーカッション)。初期リゲティからバルトークへとハンガリーの作曲家を遡るプログラム。
●ヘルのリゲティ「ムジカ・リチェルカータ」はすっかり手の内に入った作品といった様子で確信に満ちた演奏。この曲が完全に「クラシック」になったことを実感する。愉悦。バルトークのヴァイオリン・ソナタ第2番では山根一仁のヴァイオリンが鮮烈。久しぶりに聴いたけど、今回もキレッキレ。第2楽章のカッコよさと来たら。余韻のある終わり方も吉。
●バルトークの2台ピアノと打楽器のためのソナタは、編成の特殊さもあって聴く機会は少ないのだが(少し前のラ・フォル・ジュルネ以来か)、録音と実演でこれくらい印象が変わる曲もない。打楽器群の鋭角的な音の立ち上がり、極端なダイナミクスはライブでこそ伝わる。よくピアノは打楽器的というけど、正真正銘の打楽器の前ではピアノの最強奏すらその強烈さで叶わない。録音で聴くと、なんとなくモノクローム、あるいは彩度の低い色調の音楽だと感じてしまうんだけど、実際にはとてもカラフル。そして、ぜんぜん晦渋ではない。第1楽章に舞踊性を感じる。第3楽章も予想以上に輝かしく、ほとんど祝祭的といっていいほどの高揚感。こういう曲だったんだと再発見。