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June 9, 2025

東京オペラシティ アートギャラリー「LOVEファッション─私を着がえるとき」

「LOVE」横山奈美
●東京オペラシティのアートギャラリーで「LOVEファッション─私を着がえるとき」展(~6/22)。入るとすぐに目に入るのが、上の「LOVE」(横山奈美/2018/豊田市美術館蔵)。演奏会のついでにすでに2回、足を運んでいるのだが(Arts友の会の会員なら無料で入れる)、これはかなりおもしろい。ファッションというテーマ、ふつうなら関心外だが、そこは東京オペラシティアートギャラリー、しっかりとアートとしての展示になっている。以前の「髙田賢三 夢をかける」と同様、洋品店っぽくはなってない。批評性があるというか。

LOVEファッション─私を着がえるとき
●こういう感じで作品が並ぶのは、ひとまずイメージ内だろう。まずは歴史的な作品ということで、右はウォルト店/ジャン=フィリップ・ウォルトのイヴニング・コート(1900年頃)。

LOVEファッション─私を着がえるとき
●こちらはJ・C・ド・カステルバジャック/ジャン=シャルル・ド・カステルバジャックのコート(1988)。クマちゃんの集合体がコートになっているというパンチのきいた作品だ。クマちゃんたちの声が聞こえてきそう。タスケテ...タスケテ...

LOVEファッション─私を着がえるとき
●これを着用すれば無敵モードに遷移できる。そんな予感を抱かせる。ヨシオクボ/久保嘉男「オーバードレス、シャツ、パンツ、レギンス」(2023)。

LOVEファッション─私を着がえるとき
●ハリネズミ的な防御力の高さというべきか、外界を拒絶しているようでいて、色付き玉でポップさをアピールする絶妙のバランス。着てみたい。ノワール・ケイ・ニノミヤ/二宮啓「ドレス、トップ、ショート・パンツ」(2023年)。

LOVEファッション─私を着がえるとき
●だが、防御力の高さではこちらが最強だろう。バレンシアガ/デムナ・ヴァザリア「鎧」(2021)。コロナ禍という文脈から生まれた作品だということを考えると、甲冑などウイルスには無力という「噛み合わなさ」を読みとるべきなのかもしれない。
●ほかにウィーン国立歌劇場創立150周年を記念して制作されたオペラ「オルランド」の衣裳に用いられた川久保玲作品が集められた一角があって、映像も展示されていたのだが、権利の関係なのか、あいにく音声はなし。添えてあった解説文には、ヴァージニア・ウルフの小説「オルランドー」とかウィーン国立歌劇場とかいった文言は出てくるが、作曲家名オルガ・ノイヴィルトは出てこない。このあたり、オペラとは本質的に作曲家のものであると思っているわれわれとは少し感覚が違うところ。映像は市販品と同じものだったのだろうか。
●客層はファッションに高感度な感じの人々が多かったのだが、そこはうっかり隣のコンサートホールから迷い込んじゃいました的な体裁で乗り切りたい。月曜日は休館なのでご注意を。