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June 10, 2025

東京フィル 平日の午後のコンサート〈コバケン、200歳を祝う〉

●9日は東京オペラシティで東京フィルの「平日の午後のコンサート」。指揮とお話は小林研一郎、ナビゲーターは朝岡聡。この「午後のコンサート」シリーズは東京フィルの人気企画。名曲の演奏に加えて、軽妙なトークも大きな魅力になっている。この日も事前に集めたお客様からの質問を、司会の朝岡さんがマエストロに尋ねるコーナーがあるなど、とてもフレンドリー。客席も定期公演とはまったく異なる雰囲気。平日の14時開演なのでリタイア層が中心になるのは自然なこと。
●プログラムは前半がヨハン・シュトラウス2世の音楽で、ワルツ「春の声」、兄弟合作の「ピツィカート・ポルカ」、ワルツ「美しく青きドナウ」、後半がベートーヴェンの交響曲第6番「田園」。〈コバケン、200歳を祝う〉と銘打たれた公演なのだが、もちろん小林研一郎が200歳を迎えるわけではなく(85歳だ)、ヨハン・シュトラウス2世の生誕200年を祝っている。そのあたりもトークで話題になっていて、客席に笑いが起きること多数。「春の声」は冒頭の一音から重く気迫のこもった音。「ピツィカート・ポルカ」は軽い演出付き。ステージ脇にピアノが用意してあって、どういうことかと思ったら、「美しく青きドナウ」の演奏の前にマエストロが弾きながら曲について解説。といっても堅い話をするわけではなく、自然体で作品への思いを語る。
●後半の「田園」は演奏前のトークでも触れられていたが、祈りの感情が込められたエモーショナルなベートーヴェン。巨匠の至芸といった趣で、重厚な味わい。終楽章の陶酔感が白眉。曲が終わった後、朝岡さんがアンコールを尋ねたところ、マエストロはこのような音楽の後にできるアンコールはありませんと話して、これでおしまい。まったくもってその通りだと思う。時間もちょうどよい。「田園」の余韻を持ち帰ることができた。