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June 17, 2025

シューマン・クァルテット ベートーヴェン・サイクル III

●14日夜はサントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 2025で、シューマン・クァルテットのベートーヴェン・サイクル第3夜。ブルーローズ(小ホール)での開催。第2夜には行けなかったので、これが第1夜に続く2公演目。メンバーはエリック・シューマン、ケン・シューマン、ファイト・ヘルテンシュタイン、マーク・シューマン。今回のシリーズは各回のプログラムのコンセプトが掲げられていて、この日は Light。ベートーヴェンの「光」の部分に着目して、弦楽四重奏曲第3番ニ長調作品18-3、弦楽四重奏曲第10番変ホ長調作品74「ハープ」、弦楽四重奏曲第9番ハ長調作品59-3「ラズモフスキー第3番」。いずれの回もまず初期の作品18を一曲演奏し、その性格に応じたほかの曲が続く形になっており、根底に「作品18の6曲に後のベートーヴェンの萌芽が含まれている」という発想があるのがおもしろい。
●第1夜では会場のサイズを超えるようなパワフルな演奏が印象的だったが、この日は作品の性格もあってか、よりスタンダードな印象。いくぶん角が取れていたかも。とはいえ、音楽の力強さ、高揚感、輝かしさは変わらず。切れ味だけではなく、ユーモアやウィットの要素もふんだんに感じられる。圧巻は後半の「ラズモフスキー第3番」。この曲の終楽章の白熱ぶりは尋常ではない。ベートーヴェンならではの執拗さ。
●ラズモフスキー第1番と第2番にはクライアント向けのサービスとしてロシアの民謡が引用されている。第1番は第4楽章に、第2番は第3楽章に登場する。前者はアレンスキーの交響曲第1番の第4楽章に、後者はムソルグスキーのオペラ「ボリス・ゴドゥノフ」にも出てくる。となると、第3番にもなにかロシア由来の引用があっておかしくなく、おそらくは第2楽章の主題がそうなんだろうと推測できる。で、なんとなくなんだけど、これって子守唄なんじゃないかなって気がする。たとえば、ラズモフスキーが母から聞いた子守唄をベートーヴェンに教えたとか、そんな背景を想像してみる。
●アンコールは翌日の予告編をすると決めているようで、エリックが日本語でメッセージを述べてから、弦楽四重奏曲第4番ハ短調作品18-4より第3楽章。