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June 18, 2025

園田隆一郎指揮パシフィックフィルハーモニア東京のグルック、ラフマニノフ、チャイコフスキー

●16日はサントリーホールで園田隆一郎指揮パシフィックフィル。略称は「パシフィル」でいいのかな。旧称は東京ニューシティ管弦楽団。現在の名称になってから初めて聴く。プログラムはグルック(ワーグナー編)のオペラ「オーリードのイフィジェニー」序曲、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番(Budo)、チャイコフスキーの交響曲第5番で名曲ぞろい。が、今やグルック~ワーグナーの「オーリードのイフィジェニー」序曲を聴く機会は貴重かも。自分にとっては「懐かし名曲」なので、聴けてうれしかった。重厚な響きでオーケストラが驀進する。グルックというよりはワーグナーを聴いたという充足感。
●ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番でソリストを務めたのはBudo。YouTubeで大人気のピアニストで、チャンネル登録者数は13万人。とても勢いのある奏者のようで、まもなく全国ツアーを行う模様。きらびやかな衣装で、厚底の靴(なのかな?)を履いて登場、演奏時に靴を脱いだ。靴をそばにおいて弾くスタイルは珍しい。歩く姿勢も独特な感じで、見た目のインパクト大。ただ、演奏は奇抜ではなく、むしろ折り目正しいくらい。ソロとオーケストラの間に対話性がほしいところではあるものの、タッチは強靭で、華やか。演奏後、両手を高々と挙げて客席のあちこちにアピール。ファンの集いにまちがって紛れ込んでしまった気分になる。アンコールにドビュッシーの「月の光」。こちらは自在のソロで、照明効果も用いて、自分の世界を作り出す。演奏後、ふたたび両手を挙げて客席にアピール。型にはまらない新時代の才能の登場を印象付けた。
●後半のチャイコフスキーは流麗で格調高い。バランスがとれていて、音楽の流れに無理がない。オーケストラは明るめのリッチなサウンドで、よく鳴る。楽団員一覧を見ると人数は少なく、フルートやトランペットは1名のみ、コントラバスは2名なので、かなりの人数がエキストラということになるが、クオリティは予想以上に高く、東京のオーケストラの層の厚さを改めて実感。客席も盛況。
●2021年9月にパシフィックフィルハーモニア東京の新音楽監督&新楽団名称発表記者会見の記事を当欄に書いているのだが、コロナ禍のためにリモート参加だったと記してあって、びっくり。現地で参加したと思い込んでいた。質疑応答の内容もいくつか印象的なものがあって、よく覚えているのに、あれがリモートだったとは……。