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June 20, 2025

クラウス・マケラ指揮パリ管弦楽団のサン=サーンス&ベルリオーズ

●18日はミューザ川崎でクラウス・マケラ指揮パリ管弦楽団。全席完売の人気ぶり。プログラムはサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」とベルリオーズの「幻想交響曲」。豪華ダブルメインプログラムでもあり、フランスの交響曲の伝統をたどるプログラムでもあり。オーケストラの十八番が並んだ。
●サン=サーンスのオルガンはリュシル・ドラ。マケラが作り出す音楽は鮮明でシャープ。俊敏で、キレがあり、明瞭、エネルギッシュ。解像度が高く見通しのよいサウンドを引き出す。基本、ためない、ひっぱらない。もっさり感ゼロのスマート・サン=サーンス。スペクタクルに過度に傾かない。後半の「幻想交響曲」はさらに強力で、管楽器セクションの名人芸をたっぷりと堪能。とくにファゴットの豊かな音色。ふわふわの絨毯が敷かれたかのよう。弦楽器もきめ細かく、輝かしい。第4楽章で一段ギアが上がったようで、かつて聴いたことのないほど細部まで彫琢された「断頭台への行進」。曲のイメージが変わる。お祭り騒ぎ的だと思っていたら、もっと奥行きのある音楽だったという。怒涛の勢いで第5楽章へ。轟音でも音色が壮麗なのがすごい。ミューザの空間はこの響きをしっかり受け止めて、澄んだ音色で満たしてくれる。
●会場は大喝采で、多数のブラボーが飛び交い、アンコールにビゼー「カルメン」前奏曲。楽員退出後も拍手が止まず、マケラのソロ・カーテンコールに。
●コンサートマスターの名前がわからなかったのだが、識者の方によればアンドレア・オビソ Andrea Obiso という人らしい。ときに腰を浮かせながら全身でリードする姿は、N響および国立カナダナショナル管弦楽団での川崎洋介に重なる。