●23日はミューザ川崎でラハフ・シャニ指揮ロッテルダム・フィル。かなり久しぶりに聴くオーケストラ。たまたまだが、週末にN響を指揮したタルモ・ペルトコスキが首席客演指揮者を務める楽団でもある。首席指揮者ラハフ・シャニが、ワーヘナールの序曲「シラノ・ド・ベルジュラック」、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番(ブルース・リウ)、ブラームスの交響曲第4番というバラエティに富んだプログラムを披露。1曲目、ワーヘナールはオランダの作曲家ということで「お国もの」。「シラノ・ド・ベルジュラック」は序曲と呼ぶには規模が大きく、実質的には交響詩か。この珍しい作品を聴けたことが大きな収穫。作風はワーグナー、リヒャルト・シュトラウスの延長上にあり、かなりのところ交響詩「ドン・ファン」が下敷きになっている。剣豪シラノの恋物語という題材からして似ている。演奏のクオリティは上々で、引きしまったサウンドで、すっかり手の内に入っている様子。弦楽器は対向配置、金管は全員横一列で並ぶ配置だった。
●プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番では、ショパン・コンクールの覇者ブルース・リウが登場。明るく、軽快なタッチのプロコフィエフ。ピアノはファツィオリ。プロコフィエフ特有のグロテスクさやアイロニーの要素は控えめで、スマートで華麗。ソリスト・アンコールがあるだろうと思っていたら、譜面台と椅子が運ばれてきて、なんとラハフ・シャニと連弾でブラームスのハンガリー舞曲第5番。そういえばシャニもピアニストだったか。譜面台にタブレットが置かれるのはもう珍しくない光景。プロコフィエフとはムードが一転して不思議な選曲だとも思ったが、後半がブラームスだからありなのか。
●ブラームスの交響曲第4番ではオーケストラの響きがずいぶん変わって、鉛色の空を思わせるような落ち着いたサウンド。すっきり見通しよく整えるのではなく、柔らかめの厚く重い響きで陰影を描く。木管楽器厚め、ふっくら。第3楽章は白熱。アンコールはメンデルスゾーンの無言歌集からシャニが編曲を手がけた「ヴェネツィアの舟歌」、さらに「紡ぎ歌」。シャニの多才ぶりが伝わる。
June 24, 2025