●16日は東京文化会館小ホールで永野英樹ピアノ・リサイタル。アンサンブル・アンテルコンタンポランでの演奏やオーケストラのなかの奏者として聴く機会はなんどもあったが、ソロ・リサイタルを聴くのは初めてかも。プログラムが実に魅力的。前半にスカルラッティのソナタを5曲とアルベニス「イベリア」第2集(ロンデーニャ、アルメリア、トゥリアーナ)、後半は生誕100年のふたり、ブーレーズの「天体暦の1ページ」とベリオの「セクエンツァ IV」、おしまいにラヴェルの「夜のガスパール」。
●伊仏西のラテンヨーロッパ・プロで、とりわけ前半はスカルラッティのイベリア半島での活動をふまえればスペイン・プロでもある。スカルラッティのソナタは続くアルベニスを予告するかのように官能性と情熱に富む。前半だけでも聴きごたえ十分だが、後半はさらにパワーアップ。ブーレーズの「天体暦の1ページ」は5分ほどのミニチュア的な楽曲。エッセンスを凝縮したブーレーズliteみたいな。ベリオは精悍、清冽。ブーレーズとベリオはセルフ譜めくりで。圧巻はラヴェル「夜のガスパール」。磨き上げられたヴィルトゥオジティ。とりわけ第2曲「絞首台」が印象的。アンコールにラヴェルの「水の戯れ」、さらに「ハイドンの名によるメヌエット」。充実の一夜。
●スカルラッティのソナタ5曲、番号を書いておくと、K208/L238、K54/L241、K310/L248、K145/L369、K141/L422ということなんだけど、21世紀にもなってカークパトリック番号とロンゴ番号を併記しなければいけないのは惜しい気がする。どちらかに統一してほしいが、きっとカークパトリック派とロンゴ派の間で今川焼派vs大判焼き派みたいな終わりなき論争がくりひろげられているのであろう。両者を満足させる大統一番号を考案できないものか。
July 17, 2025