●29日はサントリーホールでマレク・ヤノフスキ指揮PMFオーケストラ。札幌のパシフィックミュージックフェスティバル(PMF)は今回で35回目。今年は世界70か国から1344人がオーディションを受け、これを通過した23か国95名の若者たちがPMFオーケストラとして晴れ舞台に立った。札幌には行っていないのだが、東京公演のみ聴く。指揮はマレク・ヤノフスキ。鬼軍曹的なイメージで語られることの多い巨匠だが、若者たちのオーケストラを振ってくれるとは意外。いつものように厳めしい表情とはいえ、大人相手とは少し違った雰囲気も。
●プログラムはワーグナーの「ローエングリン」第1幕への前奏曲、シューマンのチェロ協奏曲(スティーヴン・イッサーリス)、シューマンの交響曲第3番「ライン」、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「死と変容」。ふつうだったら「ライン」までで序曲・協奏曲・交響曲の黄金の3点セットで完結するところだが、おしまいに「死と変容」があって一曲多い感。シューマンで終わってしまうと管楽器奏者の出番がぜんぜん足りないので、アカデミーである以上は大編成の曲を入れないわけにはいかないということか。ともあれ、シューマンの2曲をワーグナーとシュトラウスによる浄化の音楽で囲んだシンメトリックな構成になっているわけで、一本筋が通っている。
●続くときは続くもので、「ローエングリン」前奏曲は3日前にノット指揮東響で聴いたばかり。とても練り上げられた演奏で精妙。予想以上に立派。シューマンのチェロ協奏曲でイッサーリスが登場するのは豪華。とはいえ、だれが弾いてもソロとオーケストラのバランスが難しい曲ではある。くすんだ色彩で、玄妙。アンコールは「鳥の歌」だったが、編曲者がサリー・ビーミッシュだった。イッサーリスはいつもそうなのかな。シューマン「ライン」も若さ爆発というよりは質実剛健。おしまいの「死と変容」は新たに管楽器奏者たちが大勢加わって、開放感のあるサウンド。若者たちの一丸となった姿が眩しい。爽快なクライマックス。カーテンコール後も拍手が止まず、上着を脱いだマエストロが登場し、ブラボーの声があがる。
July 30, 2025