●11日はミューザ川崎でフェスタサマーミューザ2025のフィナーレコンサート。開幕に続いて東京交響楽団が登場、正指揮者の原田慶太楼が指揮。プログラムは芥川也寸志の「八甲田山」(1977)より第1曲「八甲田山」(タイトル)、第10曲「徳島隊銀山に向う」、第37曲「棺桶の神田大尉」、第38曲「終焉」、バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番(服部百音)、ニールセンの交響曲第4番「不滅」。日本、ハンガリー、デンマークの20世紀音楽を集めたプログラムのテーマは「生きる力」。
●芥川作品で「八甲田山」は意外な選曲。純管弦楽作品での洗練されたテイストとはまったく異なる昭和歌謡的な世界。真夏に思いを馳せる雪中行軍。たっぷりエモーショナルな演奏。バルトークでは服部百音が渾身のソロ。燃え尽きるかのような献身性で作品に向き合う。非常に完成度が高く、オーケストラともども雄弁。とりわけ第2楽章冒頭の抒情性が印象に残る。アンコールにファジル・サイ「クレオパトラ」から。得意のレパートリーで、これも鮮やかな技巧。
●この日の東響の弦楽器は対向配置ではなく、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、コントラバスと並ぶ標準的な配置。ニールセン「不滅」の初演時に合わせたそう。二組のティンパニも左右に分けるのではなく、中央奥と、下手側中ほどに配置。作曲者の意図は第2ティンパニはなるべく客席の近くに配置するということだったが、さすがに指揮者のそばに置くのは無理があるので、この位置にしたのだとか。たしかに左右のステレオ効果とは違った、縦方向での遠近感は客席にも伝わってきた。第1楽章冒頭から猛烈なテンションでスタート。第2楽章の木管アンサンブルのひなびた味わいが吉。終楽章は一気呵成。重厚というよりは輪郭のくっきりした硬質なサウンド。アンコールには原田がこの音楽祭のフィナーレにはこの曲と決めているらしい山本直純「好きです かわさき 愛の街」。川崎市民の歌ということなので、お祭りの締めくくりにはこれしかないということか。芥川ともども昭和の香り。
August 12, 2025