●予備知識ゼロでアーティゾン美術館の「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」展(~9/21)へ。アボリジナルのアートと聞いて、なんとなく想像していたようなスタイルの作品もあれば、地域性はあるものの完全に現代アートというほかない作品もあって、バラエティに富んでいた。
●エミリー・カーマ・イングワリィの「アライチー」(1995頃)。先住民文化に由来する装飾模様から生み出された抽象画というのは予想の範囲内だろう。いくつもあったイングワリィ作品はどれも力強く、そして洗練されいる。
●こちらはイワニ・スケースの「えぐられた大地」(2017)。42個のガラス管みたいなのが並んでいて、しばらくすると緑の蛍光色に光る。ぼんやり眺めていると「きれいだな」で終わるのだが、これはウラン資源採掘によって引き起こされた環境汚染をテーマにしており、ガラスの形はアボリジナルの伝統的な食料であるブッシュバナナを模していると知ると、穏やかな気分ではいられない。ウランと核兵器、そして作者の祖先の土地で行われたイギリスによる核実験といったテーマを内包する。
●これは楽しい。壁にずらりと色とりどりの正方形の薄いフィルムのようなものが並んでいる。マリィ・クラークの「私を見つけましたね:目に見えないものが見える時」(2023)。レコード・ジャケットを連想する人もいるかもしれないが、実はこれは28cm核のアセテート紙に印刷された顕微鏡写真。地元の河川に生える葦の細胞を顕微鏡スライドに載せて染色している。バリエーションは無数にありうる。
●アップにしてみると細胞だっていうことがよくわかる。科学実験風で、ほのかにノスタルジーも漂う。「子供の科学」的な何か。