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September 9, 2025

カルテット・エーレンのハイドン、ヤナーチェク、ベートーヴェン

●遡って5日、東京文化会館でシャイニング・シリーズVol.18 カルテット・エーレン。ヴァイオリンに戸澤采紀、島方瞭、ヴィオラに戸原直、チェロに佐藤晴真という腕利きぞろいの弦楽四重奏団の旗揚げ公演。戸澤采紀はベルリン・フィルのカラヤン・アカデミーとベルリン芸術大学修士課程、島方瞭はバンベルク交響楽団の第1ヴァイオリン奏者、戸原直はリューベック音楽大学に学んで現在は読響コンサートマスター、佐藤晴真はベルリン芸術大学で学んでミュンヘン国際音楽コンクールチェロ部門第1位といったようにドイツ色の濃いカルテット。4人そろってめちゃくちゃ上手い。プログラムはハイドンの弦楽四重奏曲第72番ハ長調、ヤナーチェクの弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第9番ハ長調「ラズモフスキー第3番」。
●三曲三様のおもしろさだが、ヤナーチェクが抜群に楽しい。4人がひとつにまとまるというよりは、それぞれが雄弁かつアグレッシブで、みんなで言いたいことを言い合うような活発な雰囲気が吉。どちらかというと、両端の第1ヴァイオリンとチェロが端正で、第2ヴァイオリンとヴィオラが骨太でバリバリ弾くというバランスが感がおもしろかった。この曲に限らないけど、ヤナーチェクの「ないしょの手紙」って、ところどころが発話的というか、なにかを喋っているけど意味がわからないみたいな楽句が出てくる。根幹にあるのは、老年期を迎えた作曲者の「モテたい」という決して叶わない願いなんだと思う。人妻カミラへの愛が生み出す切ない幻想と妄想。終楽章の叫ぶような部分は「モテたいーーー!」にちがいない。
●後半のベートーヴェン「ラズモフスキー第3番」は、ぐっとカラーが変わって、一丸となった熱い演奏。終楽章は「運命」と同様、終わりそうで終わらないベートーヴェンのフィナーレ。あ、コーダが来たかなと思ったら、さらにコーダのコーダがやってくるみたいな錯覚がある。白熱。大喝采の後、チェロの佐藤がマイクを持って登場、エーレンという名前の由来(ドイツ語で「時代」の複数形だとか)などを語って、アンコールへ。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが入れ替わって、ラヴェルの弦楽四重奏曲の第2楽章。ここでグラグラと少し揺れた。公演中の地震はすぐに震源地を確かめられないので、大きな揺れでなくとも心が乱れる。終わってからスマホの電源を入れ、大きな地震ではないことがわかって落ち着いた。

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