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September 22, 2025

ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団の武満、ベートーヴェン、メンデルスゾーン

ファビオ・ルイージ NHK交響楽団
●ようやく酷暑がひと段落してくれた。連日40℃近い異常な暑さが続いて、本当に人類、どうにしかしなければ!と思うが、秋になると忘れてしまう。いや、どうしていいのかもわからないのだが。
●9月はコンサートラッシュが続く。18日はサントリーホールでファビオ・ルイージ指揮N響。武満徹の「3つの映画音楽」、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(マリア・ドゥエニャス)、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」というプログラム。後半が「イタリア」なので、前半がずいぶん長い。武満の「3つの映画音楽」は近年聴く機会の多い人気曲だが、日本人以外の指揮者で聴くのは初めてか。第3曲ワルツが端正でキリリとしているのが吉。なんとなくだけど、武満作品、徐々に聴きやすい曲の演奏頻度が増えてきて(ほかには「系図」とか)、そうでもない曲はあまり……って気もする。
●ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲はこの日のハイライト。スペインの新星、マリア・ドゥエニャスのソロが聴きもの。ぱっと見は華奢なお嬢さん風だが、音は輝かしく、朗々と鳴らす。のびやかで思い切りがよく、みずみずしい。若者らしい勢いのある音楽なのだが、カデンツァは自作なのかな、とても長い。本編の主題を巧みに盛り込みながら大きな音楽を作り出す。第1楽章はかなり長かったが(5分くらい?)、さすがに第3楽章は簡潔に済ませるだろうと思ったらこちらもたっぷり。様式的には無理がないにせよ、長さはアンバランス。でも若いスター奏者だったら「弾きまくる」のも魅力のうちだろう。センセーショナルなN響デビューで演奏後は大喝采……ではあったものの、もっと熱狂的な反応を予想していたので、好みの分かれるところだったのかも。まあ、わからなくもないのだが(饒舌すぎる?)、すごく華のある人だなと感心。ソリスト・アンコールはなし。
●後半の「イタリア」は快速テンポで一気呵成。細部まで彫琢され、作品のおもしろさを伝える。ルイージはあまりこの曲を指揮したことがなかったそうだが、イタリア人指揮者にとって「外国人から見たイタリア」というテーマはどこか気恥ずかしさや落ち着かなさを覚えるものなのだろうか。とくに終楽章のサルタレッロとか。カーテンコールのあと、拍手はすんなりと終わった……と思ったら、残って拍手を続けるお客さんもそこそこいて、ルイージのソロカーテンコールに。こちらも客席の反応が分かれたという印象。