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October 9, 2025

「マーブル館殺人事件」(アンソニー・ホロヴィッツ)

●アンソニー・ホロヴィッツの新刊「マーブル館殺人事件」(山田蘭訳/創元推理文庫)を読んだ。アンソニー・ホロヴィッツ、なにを読んでもおもしろいので毎回感心するのだが、今回もまた見事な出来ばえ。ホロヴィッツの名にふさわしい(?)技巧の冴え。今回はカササギ殺人事件シリーズの第3弾で、主人公は編集者のスーザン・ライランド。今回も劇中劇ならぬ「小説中小説」の趣向がとられている。つまり、主人公が担当している本のなかで殺人事件が起きるのだが、どうやらこれは現実の世界で起きた不審死の謎ときになっているのではないかと主人公が考える。巧緻。メタミステリーとして秀逸であると同時に、編集者小説としても読んでいて楽しい。そういえば、今年の大河ドラマの「べらぼう」も編集者ドラマではないか。今、編集者が熱い!(強引)。
●実は今回、序盤はさすがのホロヴィッツも息切れしてきたんじゃないかと思ったんだけど、途中からがぜん話がおもしろくなってきて、さすがと唸らされた。主人公が50代半ばの女性という設定も効いていて、職場を失ってしまい、フリーランスになって奮闘している、そして……という展開がとてもよい。ミステリーとしては変化球だけど、職業人生小説としてはストレート。
●小ネタとして過去の名作をほうふつとさせる要素がいくつか仕込んである。刑務所の面会場面とか、気が利いている。

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