January 11, 2006

走りすぎても死なない。「オシムの言葉」(木村元彦著)

●なんか物足りないなと思っていたら、そうだ、日本のサッカー界は元旦をもってシーズン・オフに入ってしまったのだ。やっぱりJリーグがないと寂しいっすね。スペイン・リーグを見たからといって、その代わりになるもんじゃない。
オシムの言葉●で、「オシムの言葉」(木村元彦著/集英社インターナショナル)を読んだ。日本のサッカー史上、こんな興味深い監督がいただろうか。オシム語録の数々はとても有名になった。「ライオンに追われた野ウサギが逃げ出すときに、肉離れを起こしたりしない」「ベテランとは、第2次世界大戦のころにプレーしていた選手」「大事なことは、昨日どうだったか、明日どうかではなく、一日一日を大切にすること」。
●並外れた監督としての実績、JEFの快進撃、ユーモアとアイロニーに満ちた語録などで、うっかりすると忘れてしまうのだが、オシムは90年代に祖国の終焉に立ち会ったユーゴ人である。生まれはサラエボ。ある日、サラエボで家族と過ごし、仕事場のベオグラードにもどろうと空港へ向かった。すると騒然とした空気の中でセルビア系住民がチェックインカウンターに殺到していた。オシムは妙だと感じて、見送りにきた妻にいっしょにこのままベオグラードまでついてこないかという。でも妻は大丈夫でしょうといって、そのまま夫を見送った。これが運命の分かれ道、その2日後に爆撃が開始、サラエボ包囲戦が始まる。家族は離れ離れ、アマチュア無線のリレーなどで互いの生存を確認しながら、やっと再会できたのは2年半後。そんなバックボーンを知ってからオシム語録を眺めると、これまでとはまた違った光景が見えてくる。たとえば、「新聞記者は戦争を始めることができる」とか。
●プレーヤー時代のオシムが「シュトラウス」の異名をとっていたって話もおかしい。ヨハン・シュトラウスのワルツみたいにエレガントにボールをさばいたってことらしい。

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