●新聞やニュースで伝えられることや身の回りに起きる大小さまざまな出来事、そしてそれについて巷の人々が語る言葉。その多くにうんざりさせられることがあると、こう思う。ああ、世間とワタシとにあるこの深い溝はなんだろう、彼らがなにを言っているかよくわからないし、彼らと同じようにふるまうことがどうしてワタシにゃこんなに難しいんだろうか……。
●てなぐあいに1ミリセコンドでも苦悩した経験がある者は直ちに読むべし、「告白」(町田康/中央公論新社)。去年話題になった本を今頃恐縮なんだけど、まさかこれほどとは。今まで「町田康はエッセイなら死にそうにおもしろいんだけど、小説のほうはそれほどでもないかな~」などとたわけたことを思ってたバカ者は要反省(←ワタシのことだ)。
●「告白」は明治26年に起きた「河内十人斬り」を題材としている、といったことは一切知らずに読んでもオッケー。なぜ人はわかりあえないのか、そしてなぜ人は人を殺すのか。それは人は知性ゆえに思弁的になり、近代的自我を持ってしまったから。元パンク歌手のステキすぎる文体に気持ちよく惑わされながら読み、そして知る、「告白」が人の本質に迫った堂々たる傑作であることを。しかもそんな重いテーマを扱いながら、見開きあたり一回はクヒクヒと痙攣しつつ爆笑してしまうという奇跡のような小説なんである。主人公城戸熊太郎にあなたは自己を投影して共感できただろうか。できたはずだ。できないなら、あなたとワタシはなにも分かり合えない。
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●伊福部昭、逝く(asahi.com)。謹んでご冥福をお祈りいたします。