Books: 2008年7月アーカイブ

July 24, 2008

不朽の名作、絶賛発売中!

●そういえば、大ベストセラーのあのファンタジーが発売されたようである。毎度毎度でなんですが、今回最終巻っていうことなので、また置いておこうか。

ハンス・ホッターと冬の旅

超大ヒット・ロングセラー「ハンス・ホッターと冬の旅」。水車小屋に働く平凡な若者が冒険の旅へと出発、雪と氷と戦いながら、菩提樹で憩ったり、鬼火と戯れたり、ガール・フレンドを懐かしんで涙を流したり、郵便馬車と出会ったりと大活躍。ラストシーンでは謎の辻音楽師と対決、果たして主人公は敵の魔法のライアーが生み出す幻想と幻覚、そして果てしない孤独に打ち勝てるのか! 新境地へ到達した不朽の名作、半世紀くらい前から絶賛発売中!!
●ふー。やれやれ。って、やれやれじゃないか。
ホノルル、ブラジル●暑い日が続く。暑いときにはその暑さにふさわしいものを読もうと思い、「ホノルル、ブラジル―熱帯作文集」(管啓次郎著/インスクリプト)を手に取る。気に入った一節を見つけるとメモせずにはいられない、こんな風に。

「美」との関係はあくまでも個人個人が、一世代ごとに、自分の名と責任において作り上げるしかないということです。「伝統の美」という言い方はぜんぜん信用できない。その伝統をうけとめる自分は、いずれにせよこの一回しか生きていないんだから! 全体は誰にも見通せない。逆にいうと、あらかじめ与えられた「美」を「これが美なんだ」と信じこむ人は、結局、美しさに出会えずに終わる。美はあくまでも自分の経験として発見されるもの、発見しなくてはならないものでしょう。

 そうだよなーと肯きつつもギクリ。これ、日本の伝統美についての一節なんだけど、クラシック音楽を聴くときも、うっかりするとあらかじめ与えられた「美」を、せっせとがんばって自分の中の「美」というカテゴリーになんとか押し込めようと努めたりしかねない、ほとんど本能的な勢いで。「美」は発見するものとするなら、その座標軸は自分の中にしか描けない。だから他人の座標軸のどこにプロットされるかということとは無関係に、それは発見されたりされなかったりする。

July 17, 2008

「股旅フットボール」(宇都宮徹壱著)

●昨日のネコ名曲の話題は一日おいて明日続けるとして。
股旅フットボール―地域リーグから見たJリーグ「百年構想」の光と影●遅まきながら、これは必読、『股旅フットボール―地域リーグから見たJリーグ「百年構想」の光と影』(宇都宮徹壱著/東邦出版)。えっと、構えた書名なんだけど、日本のサッカーの4部リーグ(地域リーグ)を取材した本なんである。J1、J2があって、最近ワタシが通っている横河武蔵野FCが所属するJFLがあって、さらにその下、4部リーグのクラブ事情を伝えてくれるのだ。画期的。このテーマでおもしろくならないわけがない。
●どんなクラブが出てくるかというと、ファジアーノ岡山とかツエーゲン金沢とかカマタマーレ讃岐とかグルージャ盛岡とか、そういうクラブだ。この中には厳しい地域リーグの争いを勝ち抜いて、現在すでにJFLで活動しているクラブもある。いや、それどころかFC岐阜みたいにもうJFLも通り越してJ2まで勝ち上がってきたクラブまである。ほとんどリアル「サカつく」の世界。
●FC町田ゼルビアっていうクラブがあるんすよ、東京都町田市に。で、当時、東京都1部リーグにいたこのクラブに、地元在住の会社員小森さんという方が惚れてサポーターになる。でも都1部リーグなんて関係者とか家族とかしか観戦に来ない。そんな中で小森さんは「一人サポ」になって熱くクラブを応援する。選手は困惑するんだけど、とにかくサポーターになっちゃう。日立ビルシステムっていうチームにもやっぱり同じような「一人サポ」がいて、「一人サポ」対決が実現したっていう話もおかしいが、とにかくその小森さんは応援するだけじゃなくて、じゃあ選手に水を配ろうとか思いついて、スーパーで配ってる無料の水をもらって会場で選手に手渡したりしはじめて、ついにクラブの代表から熱烈なオファーを受けて事務局長に就任してしまう。そこから会社員をやりつつも、持てる時間とお金をすべてFC町田に注ぎ込むようになる。やっぱり会社を辞めて専業にならなきゃダメなのかなあ、でも辞めちゃうとクラブで雇ってる人たちの給料とか自分の給料とかどうやって払うんだ、とか悩んだり。ああ、スゴいリアリティ。この手触り、現場の「サッカー」って感じがズシリと伝わる。伝説だ。
●J1やスペインリーグじゃなくて、今そこにある伝説。あなたもきっと地元クラブの試合を見たくなる。

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