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October 10, 2025

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団のシベリウス他

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●ヘルベルト・ブロムシュテット、98歳(!)が来日。9日はN響との全3プログラム6公演の初日。舞台袖から登場しただけで、客席から熱烈な拍手が沸き起こる。みんな、ブロムシュテットが大好きなのだ。そして、なぜそんなことが可能なのかわからないが、前回、前々回の来日より体が動いている。両手の動きがしっかりしていて、それが音楽にも反映されていたと思う。統率力、音楽に込められた生命力という点でも近年で最上だったのでは。歩行車を押しながら自力で袖と指揮台を往復する。さすがに指揮台はバリアフリーではないので、昇り降りだけははらはらしたが、98歳で大陸間を移動して指揮活動ができていることに驚嘆するほかない。
●プログラムはグリーグの組曲「ホルベアの時代から」、ニールセンのフルート協奏曲(セバスティアン・ジャコー)、シベリウスの交響曲第5番。グリーグでは弦楽器の緻密なアンサンブルから、溌溂とした生気があふれてくる。ニールセンでのジャコーのフルートは軽やか。宙を舞うフルート。アンコールにドビュッシーの「シランクス」を吹いてくれたのだが、軽やかなのに濃密で、甘ささえ感じる。この音色表現はすごい。後半のシベリウスは近年に聴いたブロムシュテットのなかでも指折りの名演だったと思う。引きしまったサウンドで、音楽の流れがよどみなく、パッションも十分でみずみずしい。枯淡の境地ではまったくなく、生の賛歌になっている。「音楽が巨大化する老巨匠の晩年様式」とは無縁。
●今回はカバーコンダクターとしてエヴァ・オリカイネンの名が当初から発表されていたわけだが、無事にブロムシュテットの公演が実現して本当によかった。残念ながら自分は今回はこの一公演しか聴けないのだが、続くAプロ(ストラヴィンスキー「詩篇交響曲」&メンデルスゾーン「讃歌」)ではミシェル・タバシュニク(82歳)、Cプロ(ブラームス)では下野竜也がカバーコンダクター。前回は全公演ゲルゲイ・マダラシュだった。
●N響は来年、創立100年を迎える。創立100年記念事業が発表されているが、そのなかにはブロムシュテット99歳のブラームスもある。つまり、ブロムシュテットとN響は一歳差なのだ。

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